メムリンク(読み)めむりんく(英語表記)Hans Memling

日本大百科全書(ニッポニカ) 「メムリンク」の意味・わかりやすい解説

メムリンク
めむりんく
Hans Memling
(1433ころ―1494)

フランドルの画家。ドイツのゼーリゲンシュタットに生まれ、ブリュッヘで没した。同地に定住したのは1465年以降とされる。初期にはケルン派の影響を受けたと推定されるが、のち15世紀フランドルの画家たち、とくにワイデン、ボウツ、グース画風を継ぎ、とくに新要素を加えることなくこれを総合した。彼は調和と秩序の感覚に優れ、劇的な緊張や鋭い性格描写には欠けるが、温かい色調と完成された技術で精神性と詩情あふれる画面をつくりだした。人物・肖像画の作品が多いが、それらの背景に風景の断片を配置しているのは彼の新趣向で、これはイタリア絵画の影響によるものと推測されている。代表作にはグダニスクの聖母教会の祭壇画『最後の審判』、ブリュッヘの聖ヨハネ病院内メムリンク美術館の『聖カタリナの神秘の婚姻』『聖ウルスラの聖遺物箱』、フィレンツェウフィツィ美術館の『聖ベネディクト像』がある。

[野村太郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メムリンク」の意味・わかりやすい解説

メムリンク
Memlinc, Hans

[生]1436頃.ゼーリンゲンシュタット
[没]1494.8.11. ブリュージュ
フランドルの画家。ケルンで修業したのち,ブリュッセルで R.ワイデンに師事したと思われる。 1465年以降ブリュージュに定住し,敬虔な情感をたたえた静穏な作風で多くの祭壇画を制作した。また表情豊かに人物の特徴をとらえた肖像画は特にブリュージュ在住のイタリア人に好まれた。作品は『ニューエンホーベの像』 (1487,ブリュージュ,聖ヨハネ病院内メムリンク美術館) ,『聖女ウルスラの聖遺物箱』 (同) 。

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