日本大百科全書(ニッポニカ) 「メランプス」の意味・わかりやすい解説
メランプス
めらんぷす
Melampus
ギリシア神話の大預言者、また占い師。彼は親を殺された子蛇を養っていたが、睡眠中にこの蛇に耳を舐(な)められて、虫や鳥、獣(けもの)の話を解する能力を得た。さらにアポロンからは預言術を授けられ、薬草学をも修めた。あるとき、兄弟のビアスに頼まれてテッサリアへ牛を盗みに行くが捕らえられ、フィラコス王の牢(ろう)に監禁される。一年後、牢の屋根に巣くう木食い虫の会話を聞いてほかの牢にかえてもらったとたん、彼の元の牢の天井は崩れ落ちた。その預言力に驚いた王は彼を解放し、息子に子ができないわけを尋ね、彼は禿鷹(はげたか)から秘密を聞き出してその治療法を教えてやる。その礼にもらった牛は、ビアスに婚資として与えた。
のちにティリンス王プロイトスが、精神に異常をきたした3人の娘の治療を依頼するが、その報酬として彼は王国の3分の1を要求したため、王は拒否する。しかしさらに病者が増えたので、ふたたびメランプスが呼び出された。彼は初めの3分の1のほかに、今度はビアスのための3分の1も約束させて彼女たちの病を治してやり(1人は死亡)、彼ら兄弟は2人の娘と結婚した。なお、テバイ(テーベ)攻めの七将のなかの預言者アンフィアラオスは、メランプスの玄孫にあたる。古代には叙事詩『メランプス物語』がつくられたが、散逸してわからない。
[中務哲郎]