モウセンゴケ(その他表記)roundleaf sundew
Drosera rotundifolia L.

改訂新版 世界大百科事典 「モウセンゴケ」の意味・わかりやすい解説

モウセンゴケ (毛氈苔)
roundleaf sundew
Drosera rotundifolia L.

円形をした葉身の表面に多数の腺毛をもち,粘液を出して小動物を粘着捕食する,モウセンゴケ科モウセンゴケ属の食虫植物多年草。茎は普通短く,葉は根生する。葉柄は長さ0.5~7.0cm,葉身は幅0.5~1.8cm,表面に多数の緑~紅紫色で,長さ0.5~5mmの腺毛が分布する。この腺毛群を〈毛氈〉にみたてて和名がついた。腺毛は小動物を粘着するだけでなく,膨圧の変化による容積の変化とインドール酢酸による細胞の伸長により,15~20分で湾曲させて,獲物を葉身中央部へ移動させ,包みこむ。消化酵素プロテアーゼなどを使って獲物を消化吸収する。花茎は1~2本立ち,長さ5~30cmとなる。総状花序は1~20個の白色花をもつ。萼片花弁おしべはそれぞれ5個,花柱は3個あり,さらに二つに分かれる。鱗茎をつくって越冬する。北半球各地の温帯~寒帯に広く分布し,日照条件のよい酸性湿地を生育場所とする。

 モウセンゴケ属Drosera(英名sundew)は世界で約90種が知られ,そのうちの約60種はオーストラリアに集中的に分布している。日本にはほかに,ナガバノモウセンゴケD.anglica Huds.,モウセンゴケとナガバノモウセンゴケの種間雑種サジバモウセンゴケD.obovata Mert.et Koch,コモウセンゴケD.spathulata Labill.,イシモチソウD.peltata Smith,ナガバノイシモチソウD.indica L.がある。イシモチソウは日本を北限とし,南はオーストラリア,タスマニア島までの東南アジアを中心に広く分布する多年草で,地下部に直径約5mmの球状塊茎をもち,茎が立ち上がり,また葉身(捕虫葉)は楯状に葉柄についた三日月形という形態的特徴をもつ。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「モウセンゴケ」の意味・わかりやすい解説

モウセンゴケ
もうせんごけ / 毛氈苔
[学] Drosera rotundifolia L.

モウセンゴケ科(APG分類:モウセンゴケ科)の多年生食虫植物。葉は根生し、長さ2~8センチメートルの明瞭(めいりょう)な葉柄があり、杓子(しゃくし)形で長さ、幅ともに0.5~1センチメートル。縁(へり)に長い毛があり、表面は赤色またはほぼ透明な腺毛(せんもう)に覆われ、名は、これに由来する。この腺毛から粘液を分泌し、小動物が腺毛に触れるとこの粘液でこれをとらえ、消化する。6~8月、高さ6~30センチメートルで無毛の花茎に総状花序をつくり、片側に数個の花を開き、先は渦巻状に巻く。花は白色の5弁花で、1輪ずつ上方に向かって開いていく。萼(がく)は深く5裂し、裂片は長楕円(ちょうだえん)形、縁に短腺毛がある。花弁は枯れたまま、果実期にも残る。花柱は3本で深く2裂する。蒴果(さくか)は楕円形で萼より長く、褐色に熟して3裂する。日当りのよい酸性湿地に生え、北海道から九州、および北半球の亜寒帯、温帯に広く分布する。

 近縁のナガバノモウセンゴケは、葉は線状披針(ひしん)形で、長さは本種より長く、3~4センチメートルである。

[小林純子 2020年12月11日]


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百科事典マイペディア 「モウセンゴケ」の意味・わかりやすい解説

モウセンゴケ

モウセンゴケ科の食虫植物。多年草で,北海道〜九州,北半球に広く分布し,湿地にはえる。葉は根生してロゼット状に地面に広がり,杓子(しゃくし)状で柄が長く,表面には腺毛が密生,分泌液で小動物を捕え消化する。6〜8月,高さ15cm内外の花茎を出し,白色5弁の小さい花を総状につける。果実は長楕円形で,熟すると3裂し,種子を散らす。近縁のコモウセンゴケは本州〜沖縄,東南アジア,オーストラリアに分布。葉はへら形で柄が短く,花は淡紅色,果実は球形となる。ナガバノモウセンゴケは尾瀬,北海道にはえ,葉は線状へら形。サジバモウセンゴケは前種とモウセンゴケの雑種とされる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モウセンゴケ」の意味・わかりやすい解説

モウセンゴケ(毛氈苔)
モウセンゴケ
Drosera rotundifolia; sundew

モウセンゴケ科の多年草で,代表的な食虫植物。日本全土,南アジア,オーストラリアに広く分布する。日当りのよい野原や山地の酸性の湿地に生える。全体が赤みを帯び,葉は長い柄があって根生し,ロゼット状となる。へら形で上面に紅紫色の腺毛が密生し,ここから粘液を出して小虫を捕える。6~8月に長い花柄を出し,総状花序の片側に数花をつける。花は下方から順次1個ずつ開き,開花中のものだけが常に上方を向くので,花序全体はゼンマイのように巻く特徴 (巻散花序という) がある。萼は縁に短腺毛があり,花序は白色。 蒴果は細かい種子を多数つける。

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世界大百科事典(旧版)内のモウセンゴケの言及

【食虫植物】より

…すべて独立栄養者として,葉や茎にクロロフィルをもち光合成を行う一方,従属栄養的な性質ももち,獲物の小動物から窒素やリン等を摂取する。世界で,モウセンゴケ科(モウセンゴケ属約90種,モウセンゴケモドキ属1種,ハエトリグサ属1種,ムジナモ属1種),サラセニア科(サラセニア属8種,ランチュウソウ属1種,キツネノメシガイソウ属約10種),ウツボカズラ科(ウツボカズラ属約70種),フクロユキノシタ科(フクロユキノシタ属1種),ビブリス科(ビブリス属2種),ディオンコフィル科(トリフィオフィルム属1種),タヌキモ科(ムシトリスミレ属47種,タヌキモ属約150種,ゲンリセア属約15種,ビオブラリア属1種,ポリポンポリックス属2種)が知られる。日本にも2科4属21種の自生が認められる。…

※「モウセンゴケ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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