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もののあはれ もののあわれ

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百科事典マイペディアの解説

もののあはれ【もののあわれ】

平安時代の自然観および文芸の理念,本質とされるもので,しみじみとした情趣の世界。本居宣長は《源氏物語玉の小櫛》で《源氏物語》の本質が〈もののあはれ〉にあり,自然や人事にふれて発する感動・情感を書き表すことを本旨としたとし,儒教・仏教の教戒的文学観とは別の文芸評価の軸をうちだした。

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世界大百科事典 第2版の解説

もののあわれ【もののあはれ】

言葉としては10世紀半ば平安中期ごろから用いられ,《源氏物語》には12例を見る。当時の生活意識上の一規範であった。もともと〈あはれ〉は感嘆詞の〈ああ〉と〈はれ〉とがつづまった語であり,また〈もの〉は古くは神異なもの,あるいは霊的存在をさす語であったが,中古には漠然と対象を限定しない形式語となった。〈もののあはれ〉の語はそうした漠然とした主観的感情をさらに客体化し,対象として捉え直したものといえよう。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

もののあはれ
もののあわれ

平安朝の文芸理念を示すといわれる語で、本居宣長(もとおりのりなが)が重視した点でも知られる。宣長の『源氏物語玉の小櫛(おぐし)』(1799刊)によれば、「あはれ」は「物に感ずること」で、「何事にまれ、感ずべき事にあたりて、感ずべき心を知りて感ずるを、もののあはれを知るとはいふ」のであり、とくに『源氏物語』は「もののあはれ」を表現した最高の作品とされる。「あはれ」は古く記紀の歌謡などから感動を表す語として用いられているが、しだいに美意識も表すようになる。平安時代には調和のとれた美に感動することが多くなり、その場合しめやかな情緒を伴い、独特の優美な情趣の世界を形成するようになって、理念化されたとみられる。同じ時代の「をかし」と比べると、優美にかかわる点など類似した面をもつ一方、「をかし」の明るい性質に対して「あはれ」は哀感を伴う点など異なるところがある。「もののあはれ」も、こういう当時の「あはれ」と内容はほぼ同様である。ただ「もののあはれ」は「春雨のあはれ」「秋のあはれ」などを一般化したことばとみられ、「ものの」は「あはれ」の引き起こされる契機を示すのであろう。そして「あはれ」の性質は中世以後も変わっていき、強い感動を表す「あっぱれ」にもなり、同情や哀れみの意味での「あはれ」にもなるが、「もののあはれ」にはそういう変動がなく、その点とくに平安朝的な「あはれ」を示す語ともいうことができる。[武田元治]
『岡崎義恵著『日本文芸学』(1935・岩波書店) ▽『日本文学評論史』(『久松潜一著作集5』1968・至文堂)』

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世界大百科事典内のもののあはれの言及

【石上私淑言】より

…内容,問答体というスタイル,ともに《排蘆小船(あしわけおぶね)》を踏まえ,それを深化発展させた作である。和歌の定義,本質,形式,起源,歴史,詩と歌の比較など多岐にわたって論じられているが,和歌の本質を〈もののあはれ〉に見,文芸の自律性を強調した点に特色がある。【佐佐木 幸綱】。…

【艶】より

…歌学用語としても,平安時代すでに歌合判詞や歌論の類に見え,しだいに和歌の美的範疇を表す評語となる。藤原俊成の意識した艶の美には,《源氏物語》の〈もののあはれ〉を受け継ぎ,さらに余情美を求めようとする傾斜が認められる。中世以降には艶を内面化しようとする傾向が強まり,心敬の連歌論《ささめごと》などに見える〈心の艶〉〈冷艶〉の美は,その極致とされる。…

【源氏物語玉の小櫛】より

…石見浜田の藩主松平康定の依頼を受けて,1796年(寛政8)に稿成り,99年に刊行された。巻一・二が総論で,14条を設けるが,特に〈もののあはれ論〉が有名で,旧説の儒仏思想に拠る功利的解釈を不可とし,物語の本質は人間的感動・抒情に在りとした。当時としてまさに画期的であったが,短詩形文学にはそのまま妥当するが,物語,小説には不十分なことが指摘されている。…

【国学】より

…また,真淵との出会いから触発された和歌や物語の研究は,歌論の処女作《排蘆小船(あしわけおぶね)》に始まって,《石上私淑言(いそのかみのささめごと)》《新古今集美濃の家づと》《古今集遠鏡(とおかがみ)》《源氏物語玉の小櫛》などの著述のうちに着々と成果をあげる。それらの歌論・物語論をつらぬいているのは,つとに宝暦年間,独自の創見に達していた有名な〈もののあはれ〉の論に要約される主情主義的な人間観であった。宣長学は,同時代の儒学の道徳主義的人間像を排して,あるがままの心情にさからわぬ人性の自然を思想の根本に据えた。…

【本居宣長】より

…蘆をわけてゆく舟という題名のとおり,それは一つの新たな破砕と前進を志向する。そして続く《紫文要領》(1763成立)では,かの〈もののあはれ〉の説がいち早く主題化され,物語の本旨は儒仏の教えなどと違い,ものに感じて動く人の心すなわち〈もののあはれ〉を知るにあることが,《源氏物語》にそくしつぶさに論じられる。それはしかし,文芸の価値の自律をたんに説こうとしたものではない。…

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