フランスの作家アレクサンドル・デュマ(父)の長編小説。1844~45年発表。長い航海を終えてマルセイユに帰港した、誠実で健康な若い船乗りエドモン・ダンテスには、船長への昇進、相思相愛の仲のメルセデスとの結婚の二つが控え、洋々たる人生が開けようとしていた。そこに、恋敵(こいがたき)フェルナン、昇進をねたむダングラール、野心家の検事ビルフォールの邪魔が入って、結婚式の当日、彼は逮捕され、身に覚えのない罪を着せられ、重大政治犯として、孤島イフの城塞(じょうさい)監獄に幽閉されてしまう。14年後、同じ境遇にあったファリア神父の死を利用して脱獄に成功。その後、神父が地中海の孤島モンテ・クリスト島に隠しておいた財宝を受け継ぎ、モンテ・クリスト伯爵と変名してパリ社交界に登場、かつて自分を陥れた人物たちに、次々と冷酷な復讐(ふくしゅう)を行っていく。日本でも、黒岩涙香(るいこう)翻案の『巌窟王(がんくつおう)』(1901~02)として、明治以来多くの人々に愛読されている。
[宮原 信]
『山内義雄訳『モンテ・クリスト伯』全七冊(岩波文庫)』▽『松下和則・松下彩子訳『モンテ・クリスト伯』全三巻(『世界文学全集24~26』1980・集英社)』
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