ヤヌス(読み)やぬす(英語表記)Janus

翻訳|Janus

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヤヌス」の意味・わかりやすい解説

ヤヌス
Janus

古代ローマの神。前向きとうしろ向きの2つの顔をもつ双面神で,門や正月をはじめあらゆることの入口と始源を司ると信じられる。伝説によれば,ラチウムの最古の王で,彼の名にちなみヤニクルムと呼ばれることになる丘の上に最初の町を建設して住み,ユピテル (ゼウス) に王位を簒奪されたサツルヌス (クロノス) が,この地方に亡命してくると,これをあたたかく迎え,カピトリウムの丘上に町を建てて住んだこの神と協力して,当時まったく未開であったラチウムの人々に文明を教え,黄金時代を現出させたという。カミセまたはカマセネという名のニンフを妻にめとり,ティベル川の神ティベリヌスをはじめとする子供たちをもうけたとされるが,また水のニンフのユトゥルナとも結婚し,彼女にフォンスまたはフォントゥスと呼ばれる泉の神を生ませたともいう。

ヤヌス
Janus

土星衛星。 1966年 A.ドルフュスが発見したが,その後の観測では見つからず,存在疑問視された。 80年,パスクが新たに衛星を発見し,ヤヌスと命名された。光度 14等。公転周期 16時間 46分。半径は 80~110km。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤヌス」の意味・わかりやすい解説

ヤヌス
やぬす
Janus

ローマの古い神。元来物事の始めをつかさどる神で、門がすべての行動の始まりを象徴することから、門の守護神となり、前後を向いた二つの頭をもつ姿で表された。犠牲などの宗教儀式では彼の名が最初によばれ、またローマ暦の1月は彼の名にちなんでヤヌアリウスJanuāriusとよばれた。神話においては、ヤヌスは古い時代にラティウムを支配した王で、ローマのヤニクルムの丘に都市を築き、ユピテルに追放されたサトゥルヌス神(ギリシアのクロノスと同じ)を迎えた。このサトゥルヌスは、カピトリウムの丘に都市サトゥルニアを建設したという。ヤヌスの治世は黄金時代で、彼はラティウムの住民にさまざまな技術を教え、野蛮な生活を改めさせた。ロムルスに女たちを奪われたサビニ人がローマを襲撃しようとしたとき、ヤヌスは熱湯の泉を噴出させて敵を敗走させた。このとき以来、戦争中はヤヌスの神殿の扉が開かれるようになったと伝えられる。

[小川正広]

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