ヤン=ミルズ理論(読み)ヤン=ミルズりろん(英語表記)Yang-Mills theory

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヤン=ミルズ理論」の意味・わかりやすい解説

ヤン=ミルズ理論
ヤン=ミルズりろん
Yang-Mills theory

1954年に中国生まれのアメリカ合衆国の物理学者楊振寧とアメリカの物理学者ロバート・L.ミルズによって提唱されたゲージ理論。自然界には四つの異なる力,すなわち,電磁気力,弱い力,強い力,重力が存在する(→四つの力)。電磁気力については,マクスウェルの方程式によって統一的な記述がなされる。弱い力はクォークレプトンに働きβ崩壊などの粒子の崩壊の原因となる。また,強い力は,すべての色電荷をもつ素粒子に働き,陽子の間の電気的な斥力に打ち勝って,中性子とともに原子核を形成する。楊(ヤン)とミルズは,リー群の理論に基づいて,強い力を記述するゲージ理論を提唱した。素粒子に働く強い力の記述に関して,クォークの閉じ込めと呼ばれる仮説がある。これは,クォークは自然界で単独では存在せず,核子中間子の中に閉じ込められているという仮説で,いわゆるマス・ギャップの存在と密接にかかわっている。クォークの閉じ込めについては,実験的な証拠やコンピュータによるシミュレーションがあるが,ゲージ理論を数学的に厳密に構成し,それに基づいて解析的に示すことはまだなされていない。2000年にアメリカのクレイ数学研究所が数学の七つの未解決問題ミレニアム問題として提出し,それぞれの問題に 100万ドルの懸賞金をかけた。ヤン=ミルズ理論とマス・ギャップはこれらの問題の一つとしてあげられている。(→素粒子物理学量子色力学

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