マクスウェルの方程式(読み)マクスウェルのほうていしき(英語表記)Maxwell's equations

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マクスウェルの方程式」の意味・わかりやすい解説

マクスウェルの方程式
マクスウェルのほうていしき
Maxwell's equation

電磁気現象を支配する基礎方程式。 J.C.マクスウェルは電磁気に関する諸法則を次の1組の基礎方程式に定式化した。
ここで E は電場,H磁場D電束密度B磁束密度i電流密度,ρは電荷密度t は時間を表わす。 (1) 式は電磁誘導の法則,(2) 式は電流のつくる磁場に関するアンペールの法則変位電流D/∂t を加えて一般化したもの。この2つの式で電場と磁場が関係づけられ,これにクーロンの法則に由来する (3) ,(4) 式が補足されている。 (3) ,(4) 式はもともと定常状態で導かれたものであるが,非定常状態においても成り立つと考えられた。等方性の媒質中では,誘電率をε,透磁率をμとすれば,D=εEB=μH である。 (2) 式で変位電流 ∂D/∂t をつけ加えたのは電荷の保存についての連続の式 divi=-∂ρ/∂t を考慮したからである。変位電流を導入したことによりマクスウェルはこの基礎方程式から電磁波の存在を理論的に予言したが,これは数年後 H.R.ヘルツにより実験的に証明された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マクスウェルの方程式」の意味・わかりやすい解説

マクスウェルの方程式
まくすうぇるのほうていしき
Maxwell's equations

電磁場の時間的、空間的変化を記述するもっとも基本的な方程式である。1864年にイギリスのマクスウェルによって提出されたので、この名でよばれるが、それ以前の多数の実験家によって得られたいくつかの実験事実に基づいている。ドイツのH・R・ヘルツが発展させたので、マクスウェル‐ヘルツの電磁方程式Maxwell-Hertz's electromagnetic equationsともいう。自然界におけるほとんどの電磁気現象は、この方程式から出発して説明できる。古典的電磁気現象に関しては完全であるが、量子力学的現象が関与してくる現象においては完全ではなくなる場合がある。物質中においては、量子力学的現象が関与してくるが、現象を巨視的にとらえる場合には物質中でも成り立つように拡張されたマクスウェルの方程式を適用することができる。

 マクスウェルの方程式は次の4個の方程式から成り立っている。

  rotE=∂B/∂t……(1)
  rotH=(∂D/∂t)+i……(2)
  divD=ρ……(3)
  divB=0……(4)
ここで、Eは電場、Bは磁束密度である。EとBはローレンツ力によって定義される。iは電流密度である。DはEを使って定義されるが、物質中においては物質の電気的性質に依存する。一般にD=εEと書いてεをその物質の誘電率とよぶ。HはBを使って定義されるが、物質中においては物質の磁気的性質に依存する。一般にB=μHと書いてμをその物質の透磁率とよぶ。マクスウェルの方程式のうち(3)と(4)は、それぞれ(2)と(1)に対する初期条件意味をもっている。こうして6個の未知関数EとBに対して、時間的変化を記述する6個の方程式が与えられていることになる。

[安岡弘志]

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