ヨンキント(読み)よんきんと(その他表記)Johan Barthold Jongkind

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨンキント」の意味・わかりやすい解説

ヨンキント
よんきんと
Johan Barthold Jongkind
(1819―1891)

オランダの風景画家ロッテルダム近郊に徴税官の息子として生まれ、初め公証人役場で働く。ハーグの美術学校を経て1846~1853年パリの海洋風景画家イザベイLouis E. Isabey(1804―1886)のアトリエで修行。バルビゾン派の画家たちと交わり、ノルマンディーブルターニュを旅行後、1855年帰国し、情感的な雰囲気をとらえた海浜、港湾風景を描く。1860~1870年ふたたびパリに滞在し、各地にスケッチ旅行を試み、海洋風景を描く画家ブーダン親交を結ぶ。直観的で軽妙なタッチによる水彩画にとくに優れ、初期にはコローボニントン、イザベイの影響が強いが、1850年代以後の制作では印象派を先取りすると評価される。過度の飲酒による精神障害のためグルノーブル近郊サンタンドレの精神科病院で死去。代表作は『ロッテルダムの港』(1856・アムステルダム市立美術館)など。

[野村太郎]


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改訂新版 世界大百科事典 「ヨンキント」の意味・わかりやすい解説

ヨンキント
Johan Barthold Jongkind
生没年:1819-91

オランダの風景画家。ドイツ国境に近いラトロプLattropに生まれ,ロッテルダム近郊で育つ。ハーグの美術学校で学んだのち,1845年パリに移住しロマン派の画家E.イザベーに師事。48年の初入選以来たびたびサロン(官展)に出品するかたわら,T.ルソー,コローらと親交を結ぶ。55-60年のロッテルダム滞在を最後にフランスに永住。50年代末から60年代初頭に,明るい色彩筆触並置によって太陽光の輝きを再現する斬新な画風を確立。同じころ知り合った若きモネをはじめ,シスレーやピサロの芸術形成に多大の影響を与えたことから,印象派の最大の先駆者とみなされている。しかし彼自身は戸外での油彩画制作は行っていない。ボードレール,ゴンクール兄弟ら多くの批評家から称賛されたが,不安定な精神状態,とりわけ被害妄想に悩まされ続けた。
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百科事典マイペディア 「ヨンキント」の意味・わかりやすい解説

ヨンキント

オランダの風景画家。ロッテルダムの近くのラトロプ村に生まれ,早くから故国を去ってほとんどフランスで活動し,バルビゾン派の画家たちと交流をもつ。パリやルアーブルの海岸風景を好んで描き,その明るく清新な色彩と自由なタッチにより,ウジェーヌ・ブーダン〔1824-1898〕とともに印象主義の先駆者の一人に数えられる。油絵のほか,水彩画も多数制作。代表作は《ロズモン城の廃墟》(1861年,オルセー美術館蔵),《トゥルネル河岸から見たノートル・ダム大聖堂》(1852年,パリ,プティ・パレ美術館蔵)など。
→関連項目外光派

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヨンキント」の意味・わかりやすい解説

ヨンキント
Jongkind, Johan Barthold

[生]1819.6.3. ラトロプ
[没]1891.2.9. コートサンタンドレ
オランダの画家,銅版画家。ハーグで修業したのち,1846年にパリに行きバルビゾン派の影響を受けて風景画に独自の作風を開いた。 48,52年のサロンに出品。 55年に一時オランダに戻ったが,60年に再びパリに出て,62年トゥールービルで E.ブーダンと親交をもち,年少のモネにも影響を与えた。明るい光線と遠くに広がる地平線をもつ風景画を描き,印象派の先駆的存在となった。セーヌ河畔,パリ旧市街,ノルマンディー海岸,オランダの運河などを好んで主題としたが,78年以降はコートサンタンドレに移住し,同地の風景画を多数残した。

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世界大百科事典(旧版)内のヨンキントの言及

【オランダ美術】より

…フランスで写実主義的絵画が台頭する19世紀半ばになって,ようやくオランダでも17世紀絵画の伝統を新しい感性と技巧によってとらえ直す試みが芽生えはじめる。印象主義の先駆者ヨンキントはフランスにとどまりつつ故郷の風景を好んで描き,オランダ国内でもマーリスMaris兄弟,ウェイセンブルッフHendrick Johannes Weissenbruch(1824‐1903),イスラエルスJozef Israels(1824‐1911)ら〈ハーグ派〉の画家が,バルビゾン派の影響を消化しつつ灰色系の色調を主体とした清潔で抒情的な風景画を残した。しかし19世紀最大の画家としては,短い劇的な生涯をフランスで閉じたファン・ゴッホを挙げねばならない。…

※「ヨンキント」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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