らく(読み)ラク

デジタル大辞泉 「らく」の意味・読み・例文・類語

らく[接尾]

[接尾]上一段活用動詞の未然形、上二段・下二段・カ行変格・サ行変格・ナ行変格活用の動詞および助動詞「つ」「ぬ」「しむ」「ゆ」などの終止形に付く。
上の活用語を体言化し、…すること、の意を表す。また、…する時、などの意を表す場合もある。
「潮満てば入りぬる磯の草なれや見―少なく恋ふ―の多き」〈・一三九四〉
告ぐ」「申しつ」などに付いて引用文を導き、…することには、という意を表す。
神代よりいひて来―そらみつ大和の国は」〈・八九四〉
文末にあって詠嘆の意を表す。助詞「に」または「も」を伴うこともある。…することよ。…であることよ。
天の川なづさひ渡り君が手もいまだまかねば夜のふけぬ―」〈・二〇七一〉
[補説](1) 「く」とともにク語法、またはカ行延言の語尾ともよばれる。(2) 「らく」は、平安時代以降は造語力を失い、「桜花散りかひくもれ老いらくの来むといふなる道まがふがに」〈古今・賀〉などのように、少数の語にのみ残ったが、後世になって誤った類推から、「望むらく」「惜しむらく」のように、四段活用の語にも付いた形がみられるようになった。「望むらくはあと一歩努力が足りない」「やり手だが、惜しむらくは好運に恵まれない」→[接尾]ク語法

ら‐く[連語]

[連語]《完了の助動詞「り」のク語法。上代語》…ていること。…てあること。
「さ雄鹿の小野の草伏しいちしろく我が問はなくに人の知れ―」〈・二二六八〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「らく」の意味・読み・例文・類語

らく

  1. 〘 接尾語 〙
  2. [ 一 ] 活用語に付いて、これを名詞化する。意味・用法は、四段・ラ変動詞や形容詞の未然形に付く「く」と同じ。上二段・下二段・カ変・サ変・ナ変活用動詞やこれに準ずる活用をする助動詞の終止形、上一段活用動詞の未然形(または連用形)に付く。→語誌( 1 )
    1. 名詞化された語が、主語や連用修飾語となる場合。多くは「…すること」の意、時には「…する時」などの意となる場合もある。
      1. [初出の実例]「御間城入彦(みまきいりびこ)はや 〈略〉(一云)大き戸より うかかひて 殺さむと す羅句(ラク)を知らに 姫遊びすも」(出典:日本書紀(720)崇神一〇年九月・歌謡)
    2. 「告ぐ」「申しつ」などに付いて、引用文を導く場合。
      1. [初出の実例]「大御神の命以ちて、僕が哭き伊佐知流事を問ひ賜へり。故、白(まを)し都良久(つラク)」(出典:古事記(712)上)
    3. 文末、特に歌の末にあって、これを名詞止めの感動表現とする。「…らくに」「…らくも」の形をとることも多い。…することよ。…であることよ。
      1. [初出の実例]「夜は 夜の明くるきはみ 思ひつつ 眠(い)も寝かてにと 明かしつ良久(ラク)も 長き此の夜を」(出典:万葉集(8C後)四・四八五)
  3. [ 二 ] ( 中古以降、[ 一 ]の形にひかれて、四段活用動詞にも付けるようになったもの ) 「…すること」の意で、引用文を導く。→語誌( 2 )
    1. [初出の実例]「故に天女の身子を誥(なしる)らく、汝、解脱无は名なりと」(出典:法華義疏長保四年点(1002)一)

らくの語誌

( 1 )[ 一 ]は、いわゆるク語法の一形態として説明されるものであるが、「く」とともに独立して意識され、[ 二 ]の用法を生むに至るので、接尾語として扱った。ク語法の成立については諸説がある。→「く」の補注・ク語法。
( 2 )平安時代、ク語法は一般にすたれて、主として漢文訓読に残るようになり、そこで用いられる「おそるらくは」「…すらく」などから「終止形+らく」という分析が生じて、後には「惜しむらく」「望むらく」など、四段活用の終止形に「らく」の付いた形が現われた。多くは、下に助詞「は」を伴って用いる。


ら‐く

  1. ( 完了の助動詞「り」のク語法 ) …ていること。…てあること。
    1. [初出の実例]「床じもの 打臥い伏して 思ひつつ 歎き伏せ良久(ラク)」(出典:万葉集(8C後)五・八八六)

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飲み物がわかる辞典 「らく」の解説

ラク【raki(トルコ)】


ぶどうからつくるトルコの蒸留酒で、トルコを代表する酒の一つ。干しぶどうを細かく刻んで水とともに発酵させ、アニスを加えて蒸留したもの。無色透明だが水で割ると白濁する。アルコール度数は45~50度。

出典 講談社飲み物がわかる辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のらくの言及

【十楽】より

…〈楽雑談〉〈楽書〉などはみなその意味であり,織田信長はこの動きをとりこみ,みずから安土(あづち)に楽市を設定している(楽市・楽座)。しかし江戸時代に入るとこうした楽は抑制され,地域によっては被差別民を〈らく〉と呼んだ事例があるように,この語の意味自体,大きく逆転する場合もみられた。【網野 善彦】。…

※「らく」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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