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イタリアの画家で修道僧。フィレンツェに生まれる。幼少期を孤児として過ごし、1421年に同市サンタ・マリア・デル・カルミネ聖堂の修道院に入るが、画家としての最初の記録は1431年である。したがって彼は、同聖堂ブランカッチ礼拝堂におけるマゾリーノ・ダ・パニカーレとマサッチョの壁画制作(1425~28)を実地に見学する機会があったはずで、初期の画法にはとくにマサッチョの影響が顕著である。1434年パドバに赴き、1437年にはフィレンツェに帰って『聖母子』(ローマ、バルベリーニ美術館)と『聖母子、天使および諸聖者』(パリ、ルーブル美術館)を制作した。1442年にはフィレンツェ近郊レニャイアのサン・クイリコ聖堂の修道院長に任命されるが、この年から1447年までの間に大作『聖告』(フィレンツェ、サン・ロレンツォ聖堂)および『聖母戴冠(たいかん)』(フィレンツェ、ウフィツィ美術館)が完成された。1452年ごろフィレンツェのバルトリーニ家からの委嘱で制作した円形画『聖母子』(フィレンツェ、ピッティ美術館)は、空間表現に対する彼の精通ぶりを示している。
1456年にプラートのサンタ・マルゲリータ聖堂の礼拝堂付き司祭となり、そこで修道尼ルクレチア・ブティと邂逅(かいこう)し、彼女との間に設けたのが画家フィリッピーノ・リッピである。彼はまたボッティチェッリの最初の師としても知られる。フラ・フィリッポの作品はほとんどが聖母子を主題としているが、ほかに数点の『キリスト誕生図』もある。1466年にスポレート大聖堂に『聖母戴冠』を制作すべく同地に赴くが、完成しえないまま1469年に同地で没した。
[濱谷勝也]
イタリアの画家。画家で修道僧のフラ・フィリッポ・リッピと修道尼ルクレチア・ブティとの間にプラートで生まれ、フィレンツェに没。初め父から絵の手ほどきを受けたが、その後、かつて父に師事したボッティチェッリの工房で修業した。彼の最初の大規模な仕事は、フィレンツェのサンタ・マリア・デル・カルミネ聖堂ブランカッチ礼拝堂にマサッチョが未完成のまま残した壁画を完成することであった。これを1484年ころには完成し、86年には代表作『聖ベルナルドの幻想』(フィレンツェ、聖ベネディクト会修道院)を制作している。この作品に示された繊細な描線と明るい色調は父親譲りのものにほかならない。彼はこれら一連の作品によって有力な後援者ロレンツォ・デ・メディチが「古代ギリシアの画家アペレスにも勝る」と賞賛したといわれるくらい、非常な名声を博した。そのほかの作品では、フィレンツェのサンタ・マリア・ノベッラ聖堂ストロッツィ礼拝堂に描いた連作『聖ピリポと聖ヨハネの物語』、ローマのサンタ・マリア・ソプラ・ミネルバ聖堂カラッファ礼拝堂を装う『聖トマス・アクィナス物語』がよく知られている。
[濱谷勝也]
イタリアの画家。フィレンツェで肉屋の息子として生まれる。カルメル会修道士となるべく,フィレンツェのサンタ・マリア・デル・カルミネ教会の修道院に入れられ,そこで画業を修めた。同教会のブランカッチ礼拝堂には,1425-28年にマサッチョが師マソリーノ・ダ・パニカーレとともにフレスコ《ペテロ伝》を描いたが,フィリッポ・リッピとその壁画制作との関係は不明である。しかし,32年ころ制作の《カルメル会則の承認》には,明らかにマサッチョの影響による自然主義的な形態感覚がみられる。ついでドナテロやフラ・アンジェリコ等の影響を受けるが,52-64年に制作したプラート大聖堂壁画では,15世紀半ばのフィレンツェ美術の華麗な趣味を反映した,流麗な線描による動きの表現を達成した。終始メディチ家の庇護を受け,コジモ・デ・メディチの尽力で尼僧ルクレツィア・ブーティとの結婚に特認を得,一児フィリッピーノをもうけた。
執筆者:鈴木 杜幾子
イタリアの画家。画家フィリッポ・リッピの子。プラート生れ。父の死後,その弟子であったボッティチェリの工房で画業を修める。マサッチョが未完に残したフィレンツェのサンタ・マリア・デル・カルミネ教会ブランカッチ礼拝堂の《ペテロ伝》を,1484年ころ完成させる。86年ころ,代表作《ベルナルドゥスの幻想》を制作。続いて1500年前後の約10年間に,フィレンツェのサンタ・マリア・ノベラ教会ストロッツィ礼拝堂や,ローマのサンタ・マリア・ソプラ・ミネルバ教会カラッファ礼拝堂に大がかりな壁画を制作し,名声を博す。ときに奇異の感を与えるまでに誇張した劇的な感情を画面に表現し,マニエリスムを予告する美意識を示している。
執筆者:鈴木 杜幾子
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