日本大百科全書(ニッポニカ) 「リャノ」の意味・わかりやすい解説
リャノ
りゃの
Llano
南アメリカ北部、オリノコ川流域の灌木(かんぼく)混じりの草原およびその分布地域をさす。リャノスともいう。ベネズエラからコロンビア東部に広がるオリノコ平野のうち、森林に覆われた上流域(南緯4~5度以南)と河口のデルタ地域を除く約38万平方キロメートルがこれにあたる。年中高温で雨期(5~10月)と乾期の明確なサバナ気候下にある。ベネズエラの海岸山脈、メリダ山脈、コロンビアのコルディエラ・オリエンタル山脈と続くアンデス山系とギアナ高地との間に生じた沈降帯で、地下には石油を含んだ中生代から新生代第三紀の地層が厚く堆積(たいせき)しており、オリノコ油田を形成している。リャノは標高100メートルの等高線を目安に低位リャノと高位リャノに分けられる。低位リャノは雨期に冠水する低地で、西部で広く、東部ではオリノコ川沿いの狭い地帯に限られる。高位リャノは、メリダ山麓(さんろく)の肥沃(ひよく)な扇状地性の地帯、海岸山脈南方の丘陵地帯、その東方、油田の中心地エル・ティグレ周辺の低い台地の地帯などからなる。リャノ全般は、肉牛の飼育を主とする粗放的牧畜地域であるが、メリダ山麓や海岸山脈南方の高位リャノでは、灌漑(かんがい)により米、ワタ、ゴマ、タバコ、トウモロコシなどを栽培する近代農業が営まれている。
[松本栄次]