リリシズム(読み)りりしずむ(英語表記)lyricism

翻訳|lyricism

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リリシズム」の意味・わかりやすい解説

リリシズム
lyricism

抒情性,特に芸術的表現に伴う場合をいう。またこれを追求する抒情精神。抒情詩 lyric poetryから出た言葉。叙事詩や劇などが客観的事実をその対象性,時間性において表現するのに対し,抒情詩では主観的体験または思索に基づく内的感動がその状態性,現在 (永遠の現在) 性において表現されるため,その素材である自然,生死,愛などの対象もこの感動の象徴に転化する傾向があり,しかも T. S.エリオットのいう第1の声 (詩人がみずからに語る声) による直接的表現となっている。現実の生の喜怒哀楽が昇華した形で表出される高度に芸術的な感動の特質が抒情性と呼ばれるものである。これはロマン主義象徴主義,印象主義などの作品に顕著にみられるが,抒情詩のみならず,上記の主観性,象徴性,現在性のみられる他のジャンルの詩,小説,劇,映画などにも含まれる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「リリシズム」の意味・わかりやすい解説

リリシズム
りりしずむ
lyricism

叙情性。ギリシア語のlyra(竪琴(たてごと))から出たlyric(叙情詩)に由来する。竪琴にあわせて歌う叙情詩のもつ主観的、個性的情緒を貫く精神をいう。自由闊達(かったつ)な自己情緒の表現で、人間の喜怒哀楽をすなおに表明し、リズミカルな音楽性を伴い、主題としては生、死、愛が中心になる。比較的短い詩形の叙情詩の基調となるもので、主観的熱情吐露、自己告白、自然観照など内容は多岐にわたる。叙事詩、物語詩、劇詩などの客観的描写とはおよそ無縁で、ルネサンス期、ロマン派、印象派の詩人たちの作品に共通する特色である。また音楽をはじめとする他の芸術ジャンルにも広くうかがえる。

[船戸英夫]

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