波長に比べて十分に小さい粒子による光の散乱。イギリスの物理学者レイリーにより初めてこの現象についての記述がなされたため、この名がある。透明な液体や固体中でもおこるが、もっとも身近にみられるものは気体中の散乱である。散乱光の強さは入射光の波長が短いほど強く、波長の4乗に逆比例する。
地球を取り巻く大気圏に太陽からの白色光が入射すると、大気を構成している分子によってレイリー散乱がおこる。このとき、波長の短い青い光は波長の長い赤い光よりも強く散乱されるので、昼間に地上から見上げる空は青く見える。一方、夕暮れ、あるいは早朝のように、太陽が地平線の近くに見えるときは、太陽光は斜めに大気圏に入射して長距離を通過したのちに私たちの目に届く。大気を通過する間、レイリー散乱により青い光を余分に失うため、太陽は赤みの強い色調となる。この光が雲によって乱反射されて私たちの目に入ると、雲は赤く焼けて見える。これが夕焼け、朝焼けという現象である。
また、現在の光通信が波長1.55マイクロメートル帯を利用しているのは、使用する石英系光ファイバーでは、短波長側ではレイリー散乱、長波長側では赤外吸収が主因となって損失がおこるが、全体の損失が1.55マイクロメートル付近で最小となるからである。
[久我隆弘]
Lord Rayleighは,光の波長より小さい微粒子によって散乱される光(チンダル散乱)の強さと光の波長との関係を理論的に導いた(1899年).入射光の強さおよび散乱光の強さをそれぞれ I0 およびIとすると,
で与えられる.ここに,vは微粒子の体積,Rは光源からの距離,λは光の波長,n1 および n2 はそれぞれ粒子および媒質の屈折率で,θは入射光と散乱光との角度である.すなわち,散乱光の強さは光の波長が短くなるほど強くなる.空の色が青く,夕日が赤いこともこの理論で説明される.この理論は,P.J.W. Debye(デバイ)(1944年)によってさらに拡張されて,高分子溶液の散乱光の強度と高分子の分子量との関係が導かれ,分子量の有力な測定法が与えられた.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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