スズメ目ヒタキ科ツグミ亜科の鳥。一名,ヨーロッパコマドリという。全長約14cm。日本のコマドリと同属で色も形も一見よく似ている。上面は褐色,顔と胸が赤く,腹は白い。ヨーロッパで繁殖し,北方のものは冬に南方に渡る。地上で昆虫をさがし求め,冬は1羽ずつが採食のためのなわばりをもつ。巣は樹洞や岩陰などにつくり,春と初夏に1腹5~7個の卵を産む。ヨーロッパ大陸では森の中に生息する。しかし,イギリスでは人家近くの林に多くすみ,人を恐れずに活動するので,イギリス人にはとくに愛され,イギリスの国鳥にもなっている。また,巣や卵をとると悪いことがあるという言い伝えや,ロビンが森の中で行き倒れた人をあわれんで木の葉でおおうという伝説もあり,イギリスの詩人たちもこの鳥のために多くの詩をつくっている。大航海時代以降,海外に出たイギリス人たちは,胸の赤い鳥を発見するとrobinの名をつけた。この結果,北アメリカでrobinというと,ロビンとは別種の大型種コマツグミTurdus migratoriusを指す。コマドリの仲間ではなく,ツグミの1種でロビンよりずっと大きい。全長約26cm,雄の背は黒褐色で胸は赤く腹は白い。春早くから人家近くで,ほがらかな声でよくさえずるので,やはり人々に親しまれている。
→コマドリ
執筆者:竹下 信雄
ロビンの赤い胸に関しては多くの伝説があり,イエス・キリストを苦しめるイバラの冠をはずそうとして近寄ったとき,その血しぶきを浴びたためとか,煉獄にいる死者に水を運ぼうとして火炎にやかれたためなどといわれる。イギリスでは新年の魂を宿す鳥とされ,旧年の魂を宿すとして毎年12月26日に狩られるミソサザイと対比される。殺したり傷つけたりすればたたりを被り,とくに死にかけたロビンをつかめば一生手が痙攣(けいれん)し続けるなどといわれる。またロビンが死者を葬ったり,森に迷って死んだ子を土に埋めて哀悼の歌をうたうといわれるのは,民家近くに飛来し人に親しみやすい習性によると思われる。イギリスの童謡《だれが殺したか,コック・ロビン》では,ミソサザイと結婚したこの鳥がスズメに殺され葬式をあげてもらう話が歌われている。
執筆者:荒俣 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
鳥綱スズメ目ヒタキ科ツグミ亜科の鳥。ヨーロッパに広く分布し、一部の鳥はやや南方に渡り越冬する。日本特産のコマドリと同属で姿も似ているので、ヨーロッパコマドリの別名がある。全長約14センチメートル。雌雄同色で、上面はオリーブ褐色、顔と胸はオレンジ色、腹は白い。ヨーロッパ大陸では森林性であるが、イギリスでは人家近くにも多く生息し、地上または地面近くの物陰、たとえば石垣の間や郵便受けなどに巣をつくることも珍しくない。大きな黒い目が輝く愛らしい容姿と美しいさえずり、人おじしない態度はイギリス人にことのほか愛され、国鳥となっている。細い嘴(くちばし)でおもにクモや昆虫を捕食し、冬には木の実や人の与えるパンくずなども食べる。4~5月に5、6個の卵を産み、雌だけが12~15日間抱卵する。
[竹下信雄]
…地鳴きは,ウグイスの〈笹鳴き〉に似ていて,チョッチョッと鳴く。【斎藤 隆史】
[民俗]
ミソサザイは,ヨーロッパでは旧年(過ぎ去っていく年)の象徴とされ,毎年聖ステパノの日(キリスト教会最初の殉教者ステパノの祝日,12月26日)に新年の象徴であるロビンに追われるという。そのためイギリスとフランスでは,この日に子どもたちがミソサザイをたくさんつかまえ,死骸をもって家々を回り,金銭をもらい歩く習俗もあった。…
※「ロビン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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