ローラット法(読み)ろーらっとほう(英語表記)Rowlatt Act

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ローラット法」の意味・わかりやすい解説

ローラット法
ろーらっとほう
Rowlatt Act

第一次世界大戦後、インド内の反英運動を弾圧するために、インド防衛法にかわるものとして1919年3月にインド政庁が成立させた法律。正確には「無政府・革命分子犯罪取締法」という。この法律のもととなったのは、17年にインドの治安状況とその対策の調査のため任命された委員会の報告で、その委員長S・ローラットの名を冠してこの名でよばれる。逮捕状なしの逮捕、普通の裁判手続抜きの投獄など、民族運動への法外な弾圧を目ざす治安維持法であった。法案として提出された段階からインド内の激しい反対運動をもたらしたが、19年4月のジャリアンワーラーバーグ(アムリッツァル)虐殺事件によってその運動はいっそう激化し、ガンディーに指導される第一次サティヤーグラハ(非暴力的抵抗)運動とよばれる、第一次大戦後のインドの大衆的反帝国主義闘争展開へのきっかけをつくったものといえる。

[内藤雅雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ローラット法」の意味・わかりやすい解説

ローラット法
ローラットほう
Rowlatt Acts

1919年3月,インド政庁によって可決された治安維持法。 S.ローラットを委員長とする治安委員会報告にそって,3ヵ年の期限つきで実施された。第1次世界大戦中に活発化した民族運動を封じ,言論や政治活動の自由抑圧を目的として,令状なしの逮捕や,正規の裁判なしの禁錮などを内容としたこの法律は,大戦に協力したインド人中産階層の自治への夢を粉砕したが,民族運動に大衆的基礎を与えるという逆効果を生じた。 M.ガンジーは抗議運動を組織したが,これは同年4月のアムリッツァル虐殺事件を引起した。しかし,この抗議運動は非暴力運動として継承され,ガンジーを民族運動の新しい指導者として決定づけた。なお同法は現実に適用されることはなかった。

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