ワインバーグ(読み)わいんばーぐ(英語表記)Steven Weinberg

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワインバーグ」の意味・わかりやすい解説

ワインバーグ
わいんばーぐ
Steven Weinberg
(1933―2021)

アメリカの物理学者。ニューヨークに生まれる。コーネル大学卒業ののち、デンマークコペンハーゲンにある理論物理学研究所(現、ニールス・ボーア研究所)で大学院生として研究生活を送り、帰国後1957年にプリンストン大学で博士号を取得した。コロンビア大学を経て、1959年から1966年までカリフォルニア大学、1966年から1969年までハーバード大学で教職につき、1969年にマサチューセッツ工科大学MIT)教授、1973年にハーバード大学教授、1982年にテキサス大学教授となった。

 理論物理学で幅広く研究活動を行ったが、なかでも素粒子論業績で知られている。1967年にグラショーの弱・電磁理論をさらに発展させた新しい理論を発表した。これは、質量のあるボソンの交換による弱い相互作用と質量のない光子の交換による電磁相互作用を統一して記述するゲージ理論で、中性の四次元の流れ(カレント)の存在を予言するものであった。翌1968年同じ説をワインバーグと独立にパキスタンサラムも提唱したため、ワインバーグ‐サラムの理論とよばれた。1979年、「電磁相互作用と弱い相互作用の統一理論への寄与、なかでも弱い中性カレントの予言」により、グラショー、サラムとともにノーベル物理学賞を受賞した。なお、グラショーとは高校、大学を通じて学友であった。

[編集部]

『ワインバーグ著、青山秀明他訳『ワインバーグ 場の量子論』全6巻(1997~2003・吉岡書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ワインバーグ」の意味・わかりやすい解説

ワインバーグ
Weinberg, Steven

[生]1933.5.3. ニューヨーク,ニューヨーク
[没]2021.7.23. テキサス,オースティン
スティーブン・ワインバーグ。アメリカ合衆国の核物理学者。素粒子の標準理論において電磁相互作用(電磁気力)と弱い相互作用(弱い力)の二つの力を統一的に電弱相互作用(電弱力)electroweak forceと記述する電弱理論を展開し,1979年にシェルドン・グラショー,アブドゥス・サラムとともにノーベル物理学賞(→ノーベル賞)を受賞した。グラショーとはニューヨークのブロンクス科学高等学校,コーネル大学の同級生で,それぞれ 1950年,1954年に卒業。その後,デンマークのコペンハーゲン大学理論物理学研究所(のちのニールス・ボーア研究所)で1年間学び,1957年プリンストン大学で博士号を取得した。コロンビア大学とローレンス・バークリー研究所で研究生活を送ったのち,1960~69年カリフォルニア大学バークリー校教授を務め,その間の 1966~67年ハーバード大学で特別講師として,1968~69年マサチューセッツ工科大学 MITで客員教授として教鞭をとった。1969年 MIT教授,1973年ハーバード大学教授,1983年テキサス大学オースティン校教授に就任。ワインバーグは 1967年,自然界の四つの力のうち,光子と呼ばれる質量をもたない粒子によって生じる電磁相互作用と,質量のあるボソンによって素粒子間に生じる弱い相互作用を,同じ枠組みで説明できるとした(→ワインバーグ=サラムの理論)。彼の理論はサラムやグラショーのそれとともに,素粒子同士の衝突実験の結果を予測することを可能にしたうえに,1982~83年の一連の実験で彼らが提唱した,弱い力を伝える W粒子,Z粒子の強力な証拠が見つかったことで,正しさが証明された。

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