日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
アイスキネス(政治家、雄弁家)
あいすきねす
Aischinēs
(前390ころ―前330以後)
古代ギリシア、アテネの政治家、雄弁家。貧家に生まれ、悲劇役者や官吏として生活していたが、やがて政界に進出し、紀元前348年以後、アテネの親マケドニア派の代表者となった。前346年には、フィロクラテスとともにマケドニアへ赴き、現状維持を基調とした平和条約をフィリッポス2世と結んだが、これをめぐって、のちに反マケドニア派のデモステネスとの間に激しい対立が起こった。デモステネス派との法廷闘争に関連する彼の演説が3編現存しており、この時代のギリシア政治史の貴重な史料となっている。結局彼は前330年にこの法廷闘争に敗れ、ロードス島に退き、雄弁術の教師として暮らした。
[篠崎三男]