アウラ(読み)あうら(英語表記)Aura

精選版 日本国語大辞典 「アウラ」の意味・読み・例文・類語

アウラ

〘名〙 (aura) =オーラ

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デジタル大辞泉 「アウラ」の意味・読み・例文・類語

アウラ(〈ラテン〉aura)

微風・香り・輝きの意》ある人や物のあたりに漂っている独特の雰囲気霊気。→オーラ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アウラ」の意味・わかりやすい解説

アウラ
あうら
Aura

ギリシア語の原義は息や風のそよぎを意味する。医学の領域ではガレノス以来、てんかんの発作の先触れとみなされていた。アウラはオカルティズム、神智学、超心理学の領域においては、人間を取り巻く神秘的な光彩の放射として表象される。この場合日本語ではオーラと呼ばれるのが通常である。アウラと表記される場合には、ワルター・ベンヤミンが「複製技術時代の芸術作品」Das Kunstwerk im Zeitalter seiner technischen Reproduzierbarkeit(1935~1939)において、伝統的な芸術作品の特質をしるしづけるために用いた概念をさす。この場合アウラは、芸術作品がいま・ここに結びつきながら一回的に現象する際の特有の輝きを意味し、伝統的な哲学用語としては「仮象」ないしは「美しい仮象」などに対応する。現代の哲学ないし芸術理論におけるアウラの用法は上掲論文に基づいている。

 アウラという語は20世紀初頭ドイツで広く用いられていた。しかし、ベンヤミンがアウラを「どんなに近くとも遠さの一回的な現象」と規定することから、この概念はミュンヘン宇宙論派と呼ばれるアルフレート・シューラーAlfred Schuler (1865―1923)ならびにルートウィヒ・クラーゲス思想を、直接的な機縁としているとみるのが妥当である。クラーゲスもまた遠さの現象をアウラないしニンブスNimbus(アウラと同義)の可能性の条件とするからである。シューラーにとってアウラは歴史哲学的な時代区分を特徴づけるために用いられる概念であり、クラーゲスにとってアウラはロゴスないし言語以前に存するとされるイメージに特有の輝きである。しかし、両者に共通しているのは、アウラが、歴史時代以前ないしは概念によって事物を把握する精神以前の、根源的な人間の状態に固有の現象とみなされていることである。

 ベンヤミンは、基本的に自然現象に賦与されるアウラという特質を芸術作品に転用することで、近代芸術ならびに複製技術による芸術の存在様態を的確に把握しようとする。伝統的な芸術作品が現象する際に現れる近づき難さ=遠さを、崇拝対象の核心と同一視することによって、ベンヤミンは伝統的芸術作品の根底に存する価値を「礼拝的価値Kultwert」とし、芸術作品と崇拝物の存在様態との連続性をあらわわにする。それに対して、いま・ここに原理的に拘束されることのない複製技術を基盤にする芸術形式(写真、映画)は、アウラをもたない。アウラなき芸術には礼拝的価値とは根本的に無縁な価値が割り当てられることになる。「展示的価値Ausstellungswert」である。正確にいえば、近代芸術は礼拝的価値から展示的価値への重点の移動期にある。同時に、原理的に礼拝的価値とは無縁の写真や映画も、逆にその展示的価値を抑圧して礼拝的に用いられることも可能であることをベンヤミンは示唆している。芸術作品におけるこの二つの価値の争いは、両者が基礎づけられる異なる実践の領域において理解される。礼拝的価値が究極的には呪術的、宗教的な実践と結びついているとするならば、展示的価値は別の実践に基礎づけられることになる。ベンヤミンによれば礼拝的価値から解放された、純粋に展示的価値のみに基づく芸術は、このような価値を基礎づける領域としての政治的実践の領域、それも共産主義の政治と結びつかなくてはならないとされる。それに対して、ナチズムは複製技術によって広がる芸術の広汎な公開可能性を展示的価値のためではなく、礼拝のために利用し、芸術と政治を礼拝的価値ないしはアウラを媒介にして癒着させる。ここから「ナチズムは政治を美学化するが、共産主義は美学を政治化する」というベンヤミンの著名なテーゼが提出されることになる。

[森田 團]

『ヴァルター・ベンヤミン著、浅井健二郎編訳「複製技術時代の芸術作品」「ボードレールにおけるいくつかのモチーフについて」(『ベンヤミン・コレクションⅠ』所収・ちくま学芸文庫)』『Josef FürnkäsAura(in Benjamins Begriffe, hrsg. von M. Opitz und E. Wizisla, 2000, Suhrkamp, Frankfurt am Main)』

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改訂新版 世界大百科事典 「アウラ」の意味・わかりやすい解説

アウラ
aura

本来は,微風,香り,光輝などを意味するラテン語。精神医学では前兆と訳され,かつてはてんかん発作の前ぶれを表す言葉として用いられた。現在では,脳の一部分に局在するてんかん発作(部分発作)そのものと考えられている。その症状は,てんかんの原焦点,すなわち発作の初発部位を表す場合が多いので,診断上重要な徴候である。他人には気づかれず,患者のみが体験する主観的な発作で,頭痛,めまい,上腹部からこみあげてくるいやな感じ(自律神経性前兆),きらきらする点が見える(感覚性前兆),既視感・未視感(側頭葉性前兆)などがある。持続はせいぜい数秒間と短いことが普通である。
執筆者: W,ベンヤミンは人間と事物の交渉の一回性と全体性を,この言葉で表現し,複製技術の制覇による〈アウラの消滅〉を現代文明の特質とした。
オーラ

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