改訂新版 世界大百科事典 「アオダイショウ」の意味・わかりやすい解説
アオダイショウ (青大将)
Elaphe climacophora
日本産では最大のナミヘビ科のヘビで,無毒。北海道~九州,対馬,大隅諸島,伊豆諸島の一部などの離島および国後島に分布。全長の平均は約1.5m,大きな個体は2mを超える。体色はふつう褐色を帯びたオリーブ色で,その名のとおり脱皮直後は明るいグレーがかった藍色となり,また脱皮が近づくにつれて,頭から尾にかけて走る4本の暗色縞模様が目だってくる。生後1~2年までの若い個体は,マムシに似た暗褐色の帯模様が背面に並ぶので混同されるが,尾が短くずんぐりしたマムシに比べ胴も尾も細長く,瞳孔が縦長でない点で区別がつく。
平地から低山地の森林,草原,耕地,水辺にふつうに見られ,人家の天井裏や倉庫にもすみつくが,性質は穏やか。アメリカ合衆国東部にすむ,全長2.5mのネズミヘビE.obsoleta(英名rat snake)同様好んでネズミ類を捕食し,古来日本でも米倉を守るヘビとして,〈屋敷まわり〉〈先祖さま〉などと呼ばれ保護されてきた。また耕地の野ネズミ退治に導入されることもある。他方,両側が角ばった腹板を用いて巧みに樹木や電柱に登り,停電騒ぎを起こしたり,野鳥や飼鳥の雛や卵を飲んで愛鳥家から目の敵とされる。飲みこんだ卵は,脊椎骨の前から30番目前後に発達した下突起を,食道内からこれに押しつけて割る。交尾期は5~6月ごろで7~8月ごろに1回4~17個ほどを産卵する。60日ほどで孵化(ふか)し,子ヘビは全長30~40cmくらい。3~4年で成熟する。餌は若い間はおもに小鳥の雛と卵で少数の両生類やネズミ類を含み,成長するとネズミ類など小哺乳類が半数を占める。いじめられると肛腺から自衛用の臭いにおいを出す。本種の白化型(アルビノ)はシロヘビと呼ばれる。
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報