3,3′-dihydroxy-β,β-carotene-4,4′-dione.C40H52O4(596.82).カロテノイドに属する重要な色素の一つ.植物ではフクジュ草属Adonis annuaなどの花弁に分布する.動物における分布はきわめて広く,カニやエビなどの甲殻類にもっとも普通であるが,きょく皮動物,軟体動物,腔腸動物などの無脊椎動物や魚類にも見いだされる.遊離の状態あるいは脂肪酸エステルとして存在するほか,タンパク質と結合して色素タンパク質として存在することも多い.これらの色素タンパク質はかなり不安定で,単なる加熱や有機溶媒の作用により容易に分解して,赤色のアスタキサンチンを与える.加熱によって,エビ,カニなどの殻が赤くなるのはこのためである.遊離のアスタキサンチンあるいは色素タンパク質を含む試料をアセトンで抽出し,メタノール,石油エーテルで処理して単離する.紫色の板状結晶.融点216 ℃(ピリジンから再結晶).λmax 513,493,476 nm(ピリジン).クロロホルム,ピリジンに可溶,石油エーテル,メタノールに難溶.アルカリ性で酸素によってすみやかに酸化されてアスタセン(β,β-カロテン-3,3′,4,4′-テトロン.C40H48O4.紫色の板状結晶.融点240~243 ℃(封管中).λmax 500 nm(ピリジン))にかわる.それゆえ,アスタキサンチンを含む試料からアルカリによるけん化を含む操作で色素を抽出すると,アスタキサンチンは得られず,もっぱらアスタセンが単離される.[CAS 472-61-7]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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