あっし(その他表記)attus

精選版 日本国語大辞典 「あっし」の意味・読み・例文・類語

あっし

  1. 〘 代名詞詞 〙 自称。いなせな商売人などの男性語。
    1. [初出の実例]「私(アッシ)なんざ惨めなもんだ」(出典新世帯(1908)〈徳田秋声一六)

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改訂新版 世界大百科事典 「あっし」の意味・わかりやすい解説

アツシ
attus

アイヌ織物,またその布で仕立てた衣服をいう。アイヌ語のアットゥ転訛で,厚司とも書く。シナノキニレ科の落葉高木オヒョウ樹皮をはぎとり,水に浸し柔らかくして日にさらし,繊維を細く裂いて麻を紡ぐようにして撚りをかける。こうしてできた糸を,アイヌ語でアットゥシカルペと呼ぶ原始的ないざり機(ばた)で織る。樹皮そのままの茶の濃淡で風合いの硬い布ができる。この布で筒袖,膝丈,衽(おくみ)なしの着物を作り,襟,背,袖口,裾回り等に黒または紺木綿の裂(きれ)を用いて特殊な形の文様を切付け(アップリケ)またはししゅうをしたものを,アットゥシアミプと呼ぶ。アツシの着物の意味で,伝統的なアイヌの晴着,平常着として使用される。これらの衣服に施される独特のアイヌ文様は,かっこ文,渦巻文等の左右対称文で構成され,18世紀末ころに原形ができ上がったもので呪術的・信仰的な祈りから魔除け的な意味をもつ。現代では日高胆振地方で袋物,敷物等の小物に加工され土産品として使われる。明治中期以降,内地綿糸を使って紺地や白黒の大名縞に織られた厚司織は,アツシを模したもので,丈夫なため職人,漁師などの労働着に使われた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「あっし」の意味・わかりやすい解説

アツシ
あつし / 厚司

アイヌ語でオヒョウ(ニレ科の植物)の意で、転じてオヒョウの内皮〔靭皮(じんぴ)質〕から繊維をとり、アイヌ機(アツシカルベ)で織った堅い風合いをもつ厚地の平織物。近年はアットゥと表記されることが多い。染色しないで自然褐色のまま用い、アイヌ独特の模様を切り付けと縫い取りで表す。元来、アイヌ民族が平常着や晴れの衣服に用いた。北海道では擦文(さつもん)文化期の竪穴(たてあな)住居跡から布片が出土し、この時期に本土から機織技術が伝わったとされ、その技術が発展をみず温存されている。現在日高、胆振(いぶり)地方でわずかに生産されている。また1882年(明治15)奈良の麻布商上田新八が、アツシにヒントを得て厚地の木綿でつくったのが、今日一般にみられる厚司である。非常にじょうぶで、無地染め、大名縞(じま)に染め、職人、漁夫などの仕事着や前掛けに用いられてきた。

[角山幸洋]

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百科事典マイペディア 「あっし」の意味・わかりやすい解説

アツシ

アイヌの織物,またその布で仕立てた衣服のこと。厚司とも書く。オヒョウやシナノキなどの樹皮を細く裂いて織ったもので,ふつう袖(そで)口や裾(すそ)にかっこ文,渦巻文といったアイヌの伝統的な模様が切付(きりつけ)(アップリケのこと)されており,晴着,日常着に用いられた。これにならって明治初年に内地で最初に作られた厚地の綿織物のこともアツシという。経(たて)緯(よこ)とも太い綿糸を1〜3本引きそろえて平織または綾(あや)織にする。紺の無地や単純な縞物(しまもの)が多く,じょうぶで袢纏(はんてん),前掛けなど仕事着に使われた。

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世界大百科事典(旧版)内のあっしの言及

【アイヌ】より

…変化のある皮の色調を巧みに配合して,素朴な模様をつくりだしていた。いざり機(ばた)の技術をえてからは樹皮やイラクサの繊維で糸をつむぎ,アツシ布を自製して衣服地とした。しだいに毛皮を交易品にふりむけ,本州と満州(中国東北)の古着を入手するようになった。…

※「あっし」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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