アブラヤシ(読み)あぶらやし(英語表記)oil palm

翻訳|oil palm

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アブラヤシ」の意味・わかりやすい解説

アブラヤシ
あぶらやし
oil palm
african oil palm
[学] Elaeis Jacq.

ヤシ科(APG分類:ヤシ科)ココヤシ亜科アフリカアブラヤシ(アブラヤシ)属の総称。アブラヤシは果実胚乳(はいにゅう)から油脂をとるヤシの俗称で、通常アフリカアブラヤシE. guineensis Jacq.を単にアブラヤシという。ほかにアメリカアブラヤシE. oleifera (Kunth) Cortés(Corozo oleifera L.H.Bailey)、ココヤシCocos nucifera L.、ブラジルゾウゲヤシAttalea funifera Mart.もアブラヤシと称することがある。

 アフリカアブラヤシはギニアの原産種で、コンゴ以西に8種自生し、熱帯のヤシ林として栽培される。単幹で直立し、高さ15~20メートル、径30~40センチメートル。幹肌は葉柄が長期間固着したのち脱落し、波紋になる。羽状葉は多数で長さ約6メートル、洋傘状になる。小葉は軟らかく光沢のある濃緑色で長さ1メートル、幅3センチメートル、葉並びが乱れ、基部は牙(きば)状の刺(とげ)となる。雌雄同株で、肉穂花が雌雄別々につき、果実は光沢のある赤褐色ないし黒褐色で、穂状の集果となる。種子は黒褐色の扁球(へんきゅう)形の堅果で、1個の珠孔と2個の珠孔痕(こん)があり、1個の珠孔から発芽する。果実、胚乳はろう質を含み、良質の油脂を採取する。集果は柄が短く採油に不便であるが、近年柄の長い新品種が育成され、油質がよいため製油企業が盛んになり、かつて優勢を誇ったマレーシアのゴム林はアブラヤシ林にとってかわられているほどである。中果皮の油は食用や工業用などに広く利用し、内果皮の核内の胚乳の油は化粧品などに用いる。栽培は30℃以上で多雨を要する。

[佐竹利彦 2019年4月16日]

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改訂新版 世界大百科事典 「アブラヤシ」の意味・わかりやすい解説

アブラヤシ (油椰子)
African oil palm
Elaeis guineensis Jacq.

西アフリカ原産のヤシ科の植物で,果実から油を採る。一定面積当りでみると,最も多く油が採れる作物である。高さ10~20mになり,20~40枚の葉がつく。葉は羽状複葉で長さは10m前後である。小葉は細長く数十cmから1m近くになる。葉の付け根に大きな房状に果実がなる。果実は卵形で,長さは5cmほどであり,中に1個の種子をもつ。果実の色は品種によって異なり,熟して黄色や赤色,茶色,黒色などとなる。1個の果房に1000個以上の果実がつく。果肉と種子に多量の油が含まれる。果肉から採った油をパーム油と呼びマーガリン,セッケンの原料とするほか切削油,さび止め油などにも使われる。種子から採った油はカーネル油(パーム核油palm kernel oil)と呼び,パーム油とは成分や物理特性が異なる。マーガリン,セッケンの原料とする。アフリカその他の熱帯各地で栽培され,繁殖は種子による。初期生育が遅いので1~2年間苗を育て,畑に移植する。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アブラヤシ」の意味・わかりやすい解説

アブラヤシ(油椰子)
アブラヤシ
Elaeis guineensis; oil palm

ヤシ科の高木で西アフリカ原産。熱帯地方に広く栽培される。葉は長さ 7mもある羽状葉で暗緑色,幹の上部に固まってつき,下部のものも枯れたあとの葉柄が残存して幹をおおう。雌花と雄花は別々の花序につき,雌花は短い円錐花序をなす。果実は長さ 4cmほどの卵形で,熟するとオレンジ色になる。核果で核を取巻く中果皮の繊維層に油脂を含み,これからパーム油 palm oilをとる。この油は工業原料や石鹸の原料となる。一方,核内の種子 (胚乳) をしぼって得られる油 (ヤシ核油 palm kernel oil) は食用油,特にマーガリンの原料として重要である。マレーシアでの生産が特に多い。

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百科事典マイペディア 「アブラヤシ」の意味・わかりやすい解説

アブラヤシ(油椰子)【アブラヤシ】

西アフリカ原産のヤシ科の常緑高木で,熱帯地方に広く栽培される。樹高は20mに達する。果実は鶏卵大の小果が200個ほど集まったもので,45kgに達し,1株に約10房生ずる。絞ってパーム油を採る。マーガリンやセッケン原料,防食剤として大量に輸出される。
→関連項目ヤシ(椰子)

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栄養・生化学辞典 「アブラヤシ」の解説

アブラヤシ

 [Elaeis guineensis].熱帯の重要な油料植物で,果皮からパーム油をとり,核からパーム核油(ケルネル油,カーネル油)をとる.

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世界大百科事典(旧版)内のアブラヤシの言及

【油】より

…この方が油脂成分だけでなくタンパク質もいっしょにとれるため食用としては効率がよい。西アフリカの熱帯雨林地帯を起源とするアブラヤシは,果肉部にも油脂分を含む珍しい植物で,原住民は足で踏んだり,煮て上に浮かぶ油を採集している。この植物は単位面積あたりの油脂成分の生産量がずばぬけて高いゆえに,現在では東南アジア一帯で広く商業的に栽培されている。…

【ヤシ(椰子)】より

…若い花序を切ると糖液を分泌する種(サトウヤシが代表的)では,糖みつを採取したり,アルコール飲料を作るのに用いられる。果実が食用あるいは油脂源とされるものは多いが,なかでもココヤシ,アブラヤシナツメヤシ(イラスト)の3種が有名で,熱帯の重要な栽培作物となっている。サゴヤシ(イラスト)は幹からデンプンが採取され,サラッカは果実が果物になることで有名である。…

※「アブラヤシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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