アベリア(その他表記)Abelia × grandiflora (Andre) Rehder

デジタル大辞泉 「アベリア」の意味・読み・例文・類語

アベリア(〈ラテン〉Abelia)

スイカズラ科の常緑低木中国でつくられた園芸種。枝は多数に分かれ、鮮紅色でつやがあり、葉は卵形で対生する。花は釣鐘形で赤みのある白色。6月から11月ごろまで連続して咲く。はなつくばねうつぎ。

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改訂新版 世界大百科事典 「アベリア」の意味・わかりやすい解説

アベリア
Abelia × grandiflora (Andre) Rehder

ハナツクバネウツギともいう。近年,街路樹の下植えや生垣としてよく使われるようになったスイカズラ科の半常緑性の低木。小さい花が多数つくタイワンツクバネウツギA.chinensis R.Br.と花が大きい中国産のA.uniflora R.Br.との雑種と考えられ,同じ株で萼裂片が2~5枚に切れ込むなど,両種の中間的な性質をそなえている。花はわずかに桃色がかった白色で,冬を除き次々とよく咲く。日本へは大正時代に移入された。繁殖は挿木によって行う。アベリアから交雑などによって品種改良されたものに,エドワード・ゴーチャーEdward Goucher(株は小型で花は淡紫紅色),フランシス・メーソンFrancis Mason(樹高は低く,新葉が展開すると同時に黄金斑が美しくあらわれ,花は淡いピンク),プロストラータProstrata(枝は横にひろがり,樹高50cmくらいの地被用品種)などの園芸品種がある。

ツクバネウツギ属Abeliaは約20種が東アジアを中心に分布し,いずれも株立ち状になる小低木である。日本には樹形,花の大きさや色彩萼片の形に変異の多いツクバネウツギA.spathulata Sieb.et Zucc.,コツクバネウツギA.serrata Sieb.et Zucc.,オオツクバネウツギA.tetrasepala (Koidz.) Hara et Kurosawaを産し,地方的な変種が記録されている。また前述のタイワンツクバネウツギが奄美大島に稀産する。ツクバネウツギの名は,果実に萼裂片が残るので,突く羽根に似た空木(うつぎ)の意味である。ツクバネウツギ属の子房は3室でうち2室は退化し,1室に1種子ができる。花は強い背腹性を示し,花冠は筒状鐘形で5裂し,基部の下側に蜜腺がある。おしべは上側にかたまり4本,うち2本は長い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アベリア」の意味・わかりやすい解説

アベリア
あべりあ
[学] Abelia

スイカズラ科(APG分類:スイカズラ科)の1属名であるが、園芸上はハナゾノツクバネウツギ(ハナツクバネ)を通常アベリアとよんでいる。ハナゾノツクバネウツギA. × grandiflora Rehd.は、中国中南部に分布する落葉低木で花が枝先に多数集まって開き、雄しべが花冠より飛び出す。シナツクバネウツギA. chinensis R.Br.と、中国南部の福建省に分布する常緑低木のA. uniflora R.Br.とからできた園芸雑種で、1880年以前につくられ、日本には1919年(大正8)ごろに渡来。スイカズラ科の半常緑低木で高さ1~2メートルの株立ちになる。葉は対生し、卵形で長さ2.5~4センチメートル、先は鈍くとがり、縁に鈍い鋸歯(きょし)がある。表面は光沢があり、裏面は淡色で中脈には毛がある。小枝の先に円錐(えんすい)形の花序をつけ、7月から11月ごろまで淡桃白色の花が咲き続ける。花は釣鐘(つりがね)状で長さ約2.5センチメートル、先は5裂して開き、萼片(がくへん)は2~5枚あり紅褐色を帯びる。雄しべは4本で花冠より短く、雌しべは1本あるが果実はできない。

 ハナツクバネは、関東地方以南の日当りのよい適湿の肥沃(ひよく)地でよく育つが、とくに土地は選ばない。病虫害はほとんどなく、成長が速く剪定(せんてい)に耐え、都市の公害にも強く、花期が長いので、公園や庭園に広く栽培されている。繁殖は挿木が容易で、株分けもできる。

[小林義雄 2021年12月14日]

種類

アベリア(ツクバネウツギ)属は東アジアとメキシコに約20種が分布している。日本にはツクバネウツギ、オオツクバネウツギ(メツクバネウツギ)、コツクバネウツギ、タイワンツクバネウツギの4種とその変品種が分布。ツクバネウツギは関東地方以南の本州、四国、九州の山地に生える落葉低木で、5月に黄白色の花を開く。オオツクバネウツギはツクバネウツギとよく似ているが、5枚ある萼片のうち1枚が小さく、コツクバネウツギは萼片が2~3枚である。

[小林義雄 2021年12月14日]


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百科事典マイペディア 「アベリア」の意味・わかりやすい解説

アベリア

ツクバネウツギ

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