アメーバ(読み)あめーば(英語表記)ameba

翻訳|ameba

デジタル大辞泉 「アメーバ」の意味・読み・例文・類語

アメーバ(amoeba)

肉質類原生動物の総称。単細胞で、大きさは0.02~0.5ミリ。増殖は分裂による。たえず形を変えて、仮足とよばれる原形質の突起を伸ばして運動・捕食する。淡水・海水・土壌中に広くすみ、また寄生性で病原性をもつものもある。アミーバ

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精選版 日本国語大辞典 「アメーバ」の意味・読み・例文・類語

アメーバ

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] amoeba )[ 異表記 ] アミーバ 根足虫類アメーバ目に属する原生動物の総称。体は単細胞からなり、大きさは〇・〇二~〇・五ミリメートル。透明な寒天状で、たえず体の形を変える。偽足とよばれる原形質の突起を出して運動し、食物をとる。沼、池などにすむほか人体に寄生するものもある。オオアメーバナメクジアメーバなどがある。あめむし。
    1. [初出の実例]「最初にまずアメーバのやうな原生動物が出でてから」(出典:宗教座談(1900)〈内村鑑三〉七)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アメーバ」の意味・わかりやすい解説

アメーバ
あめーば
ameba

普通には原生動物の肉質鞭毛虫(べんもうちゅう)門葉状仮足綱に属する無殻アメーバの総称。アミーバともよぶ。広義には有殻アメーバや有軸仮足類、あるいは他の動植物のアメーバ運動を行う細胞をさすこともある。

[堀上英紀]

形態

体表はプラスマレンマとよばれる細胞膜で包まれ、運動器官として一時的な仮足を形成するのが特徴。また、仮足の形態が分類の標徴として重視される。細胞内は流動するゾル性の内質と、それを円筒状に取り巻くゲル性の外質とに分化している。内質中には核、食胞ミトコンドリア収縮胞や種々の顆粒(かりゅう)が含まれる。外質は尾部でゾル化し内質となって体の前部へ流れ、仮足先端のプラスマレンマを新生して突出させると同時に、先端両側の外質に積み重なり、ゲル化して仮足の付加成長を生ずる。この体の前端部と後端部でのゾル・ゲル転換に基づく細胞の移動がアメーバ運動である。

[堀上英紀]

生態

淡水、海水、土壌中に広く生息し、寄生性で病原性を有するものもある。生活環の一時期に鞭毛を生ずる種や環境条件の変化でシスト包嚢(ほうのう))をつくる種もある。増殖は有糸分裂で、普通、二分裂である。恒久的な口はなく、細胞内消化のため摂食法には、細菌、ほかの原生動物、藻類などを仮足で包み込み、食胞をつくって体内に取り入れる食作用と、液性栄養物をプラスマレンマを陥入させて取り込む飲作用とがある。

[堀上英紀]

おもな種類

アメーバ・プロテウスAmoeba proteusは、淡水産のもっとも有名な種で、体長300~500マイクロメートル。前進中は体の前半部より1本から数本の仮足を出し、核は円盤状で1個。体の後部に1個の収縮胞をもつ。肉食性。ペロミクサ・パルストリスPelomyxa palustrisは、アメーバ類中最大の種で、体長5ミリメートルに達するものもある。単一仮足のソーセージ状で、多核であるがミトコンドリア、ゴルジ体、収縮胞をもたない。桿菌(かんきん)を細胞質中に共生させ、富栄養の黒色泥中によく生息する。雑食性で、体は普通暗褐色。半嫌気性。ネグレリア・グルベリNaegleria gruberiは、単一仮足型の小形土壌アメーバで、生活環の一時期に2本の鞭毛を生じて遊泳する。シストを形成。テカメーバ・ウエルコーサThecamoeba verrucosaは、外皮の厚いアメーバの代表種で、体長100~180マイクロメートル。移動中の外形逆三角形。背側に体の前後軸に沿って数本のしわ状隆起がある。淡水産。フラベルラ・キタタFlabellula citataは、扁平(へんぺい)な扇形で、体長よりも体幅が大きい。顆粒(かりゅう)は体後部に集まるので、前半部は透明層で占められる。海産。

[堀上英紀]


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改訂新版 世界大百科事典 「アメーバ」の意味・わかりやすい解説

アメーバ
ameba
amoeba

肉質虫綱アメーバ目Amoebidaに属する原生動物の総称。淡水,海水,湿土中,コケ類の上,または動物の消化管に寄生するなど地球上に広く分布する。

 体は1個の細胞からなり,外側はプラスマレンマplasma lemmaという薄い膜で包まれる。体の原形質は等質で透明な外質と,顆粒(かりゆう)が多く流動性のある内質とに区別される。内質には核,収縮胞,食胞,ミトコンドリアなどを含む。仮足(かそく)をだして運動するが,その際は体の後方の外質のゲルがゾル化して内質流となり,体の前方に向かって流動し,先端部のプラスマレンマが前方に膨らむ。ここで左右に分かれた内質流が膜のすぐ下でゲル化して外質になる。前方へ流出した内質は後端部のゲルがゾルに変化して補われる。このような原形質の流動によって細胞全体が前方に移動できるし,仮足によって細菌,原生動物や藻類などを体内に取り入れ消化することができる。共生細菌や藻を体内にもっている種類もある。生殖はふつう二分裂や多分裂で増えるが,有性生殖をする種類もある。

 オオアメーバAmoeba proteusは大型で,体長0.4~0.6mmになり,前方に数個の太くて長い仮足をだしてシカの角のような形になり,体の表面に隆起した縦の筋をもつ。ナメクジアメーバAmoeba limaxは小型(0.03~0.04mm)で棒状にのび,後端には小さな突起がある。病原性の赤痢アメーバEntamoeba histolyticaは人間の大腸壁組織内に寄生して潰瘍を形成する。ふつう0.02~0.03mmと小さい。このアメーバは細菌のほかに赤血球を捕食する。なお,広義には有殻アメーバ目Arcellinidaに属する原生動物や動植物の細胞でアメーバ状の時期のものも含む。有殻アメーバはキチン質やケイ質の殻をつくり,基部に開いている穴から仮足をだして運動したり餌をとる。有殻アメーバ類のナベカムリArcella vulgarisは,おわんをふせたような殻(直径0.1~0.15mm)をもち,下面中央に開く穴から数本の仮足をだして移動する。殻の表面には多くの卵形の浅いくぼみがある。

 アメーバ類は細胞学や生理学の実験材料によく利用される。わらや枯草を水の中に入れておき,少し色づいてきた水を顕微鏡で見ると観察できる。
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百科事典マイペディア 「アメーバ」の意味・わかりやすい解説

アメーバ

アミーバとも。原生動物葉状根足綱アメーバ目に属する単細胞生物の総称。大きさは0.02〜0.6mmで,外殻をもつものと裸のものがある。体は透明な原形質で,体内には核,食胞,収縮胞などがある。仮足を出して食物を捕らえたり,移動する。海水,淡水,土中などにすみ,動物の消化管に寄生するものもある。
→関連項目アメーバ運動

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栄養・生化学辞典 「アメーバ」の解説

アメーバ

 原生動物門の単細胞生物.

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世界大百科事典(旧版)内のアメーバの言及

【エンドサイトーシス】より


[飲作用]
 細胞の表面から膜が細い管状に細胞内に落ち込んで,その管の先がくびれることによって細胞内に外液を取り込む現象。アメーバで,この現象が起こっているのが発見されたのは20世紀に入ってからであるが,組織培養中の繊維芽細胞などもこれを行っている。管の太さは2μ前後で,光学顕微鏡レベルの構造であるが,位相差顕微鏡や微分干渉顕微鏡の発達によって作用の詳細が明らかになった。…

【仮足】より

…偽足,擬足ともいう。アメーバが池の中の枯葉などの表面をはって歩くとき,体の前端部から細胞の一部分を突き出して当該の表面に接着しながら進む。この突き出した部分はあたかも足のように見えることから仮足とよばれる。…

【膿瘍】より

…膿瘍のできる場所により,肺膿瘍,肝膿瘍,腎膿瘍,脳膿瘍などと呼ばれる。細菌以外では,原虫のアメーバEntamoeba histolyticaによる肝,肺,脳の膿瘍がある。また結核菌による骨や関節の炎症で壊死巣が融解し,ちょうど化膿菌による膿瘍と似た病巣ができることがある。…

※「アメーバ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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