アリウス(その他表記)Arius

翻訳|Arius

デジタル大辞泉 「アリウス」の意味・読み・例文・類語

アリウス(Arius)

[250ころ~336]アレクサンドリア司祭正統派三位一体説に対し、キリスト神性を否定してその被造者性を主張ニカイア公会議異端者として追放された。

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精選版 日本国語大辞典 「アリウス」の意味・読み・例文・類語

アリウス

  1. ( Arīus ) 四世紀初めのアレクサンドリアの神学者アリウス主義の祖。キリストの神性を否定する仮現説を主張し、ニカイア公会議三二五年)で異端者として追放された。(二五〇頃━三三六頃

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改訂新版 世界大百科事典 「アリウス」の意味・わかりやすい解説

アリウス
Arius
生没年:250ころ-336ころ

キリスト論に関する異端アリウス主義Arianismの主唱者。ギリシア名アレイオスAreios。アンティオキアルキアノスの弟子で,アレクサンドリアで聖職につく。禁欲主義的態度と説教の巧みさで人気を得た。319年ころキリストの神性について従属主義的な教えを説きはじめ,まもなくエジプトのみならず東方全体にひろめた。事態を重視したアレクサンドリア主教アレクサンドロスは主教会議を開き,アリウスを破門に処した。アリウスはニコメディアエウセビオスを頼った。皇帝コンスタンティヌス1世はコルドバ司教ホシウスに調停を命じたが,失敗した。そのため325年,ニカエアで第1回公会議(ニカエア公会議)が開催され,アリウスの教えは公式に弾劾された。その際採択された〈ニカエア信条〉によって,父なる神と子なるキリストの関係は〈ホモウシオス(同質)〉と定められた。イリュリアに追放されていたアリウスはエウセビオスなどのとりなしで復帰を許されたが,コンスタンティノープルの路上で急死した。

 アリウスは,子なるキリストが生まれた者ならば,存在の始めと存在しなかったときがあり,しかも子は創造された者であるとして,父なる神と子なるキリストが同質ではありえず,異質的(ヘテロウシオス)であると説いた。これに対し,アタナシオスをはじめとするニカエア派は,キリストの生誕は人間の誕生と同一の次元で考えるべきではなく,子なるキリストは父なる神の本質によって永遠に生誕するものであるとした。しかしアリウスの教えはニカエア公会議ののちも多数の信奉者を有していた。とくに東方では皇帝の支持もあって,アリウス派が勢力をふるい,ニカエア派が迫害にさらされた。一方,アリウス没後のアリウス派はしだいに分裂し,極端なアリウス主義ともいうべきアノモイオス派(父と子が単に異なるとする),神学上の微妙な判断を避けたホモイオス派(父と子が似ているとだけいう),半アリウス派とも呼ばれニカエア派に近いホモイウシオス派(父と子が類質であるとする)の三つに分かれた。結局,この論争はカッパドキア教父の積極的な介入もあって,381年のコンスタンティノープル公会議において,ニカエア信条を確認することによって決着がつけられた。アリウス派はそれ以前にゴート人のもとに伝わった。また近代のキリスト教諸宗派のなかでアリウス派に近いものは〈エホバの証人〉(ものみの塔)である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アリウス」の意味・わかりやすい解説

アリウス
ありうす
Arius
(250ころ―336ころ)

古代キリスト教の異端者。おそらくリビアに生まれ、アンティオキアで学び、アレクサンドリアで牧職についた。彼の神学的立場は教会内に分裂をもたらし、319年ごろ司教アレクサンドロスAlexandros(250ころ―328)のもとで開かれたアレクサンドリア教会会議によって、彼は破門された。しかしその後も紛争は収まらず、コンスタンティヌス皇帝は決着をつけるために325年ニカイア公会議を招集した。ここで、唯一絶対の神の信仰にたち、キリストを父なる神の第一の被造物として理解する彼の説は、論敵アタナシウスらによって異端説として排斥され、追放刑に処せられた。しかし彼の思想とその追従者たちは、その後も長く政治的な勢力抗争と結び付いて、キリスト教会に論争をもたらした。

[百瀬文晃 2017年11月17日]

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「アリウス」の解説

アリウス
Arius

250?~336?

古代キリスト教の異端者。アリウス派の祖。リビアの人。アレクサンドリア教会の長老となったが,さきにアンティオキアの神学者ルキアノスに学び,その説を継いで「キリストは父なる神の被造者であるから神とは異質である」と説いてニケア教会会議で異端と宣告され,イリリクムに流された。のち追放をゆるされたが,コンスタンティノープルで急死した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アリウス」の意味・わかりやすい解説

アリウス
Arius

[生]250頃.リビア
[没]336. コンスタンチノープル
アリウス派の創始者。アレイオス Areiosとも呼ばれる。アレクサンドリア教会の司祭であったが,イエス・キリストの人性を重視するいわゆるアリウス主義を唱え,古代最大の異端説の創始者となった。アリウス主義はニカイア公会議 (325) で異端説とされ,アリウスはイリリアに追放された。のち許されたが,コンスタンチノープルで死んだ。

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世界大百科事典(旧版)内のアリウスの言及

【キリスト論】より

…前者はユダヤ教にさかのぼるもの,後者は子の姿は父の様態にすぎないとする〈様態説modalism〉に対してテルトゥリアヌスが与えた論争語である。アリウスはキリストの従属性を強調して,父と子の〈同質〉を主張するアタナシオスとの間に大論争を行った。アリウス説はニカエア・コンスタンティノポリス信条(381)において退けられ,ここに正統的教義が確立した。…

【ニカエア公会議】より

…実際には250名以下)が参加した。この会議はキリスト教公認後最初の全体的集会であり,キリスト教の勝利を祝う祝典の趣もあったが,本来の目的は教義問題,すなわちアリウスが提起した父なる神と子なるキリストの関係をめぐる論争の解決にあった。結局,会議は,パレスティナの洗礼用信条(異論もある)に父と子の〈ホモウシオス(同一実体)〉の語を補ったものを〈ニカエア信条〉として採択し,それに従わぬ者を破門することを定めた。…

【ルキアノス】より

アンティオキア学派の聖書解釈学者。アリウスの先行者とされる。サモサタ出身だが,アンティオキアで教育を受け,神学校の学頭をつとめた。…

※「アリウス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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