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アルトー Artaud, Antonin

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

アルトー
Artaud, Antonin

[生]1896.9.4. マルセイユ
[没]1948.3.4. イブリシュルセーヌ
フランスの劇作家,詩人,俳優。 1920年パリに出てシュルレアリスム運動に参加。演劇,映画に活躍し,26年劇団「アルフレッド・ジャリ劇場」を組織。たびたび襲う精神病に苦しみながらも創作活動を続け,『演劇とその分身』 Le Théâtre et son double (1938) において,世界を動かすものは互いに相争う力であるとして「残酷の演劇」の理論を明らかにし,演劇はせりふのみでなく身ぶり,光,音などの総合的効果によって観客を集団的興奮状態にし,舞台との間に神秘的な一体感をつくりださねばならないとした。彼の理論は不条理演劇など,のちの前衛劇に大きな影響を与えたのみならず,近年は言語,芸術の全般にかかわるものとして高く評価されている。主著,詩集『リンボのへそ』L'Ombilic des limbes (25) ,評論『ヘリオガバルス,戴冠せるアナーキスト』 Heliogabale,ou l'anarchiste couronné (34) ,『ロデスからの手紙』 Lettres de Rodez (46) ,『ゴッホ,社会的自殺者』 Van Gogh ou le suicidé de la société (47) ,戯曲『チェンチ一族』 Les Cenci (35) 。

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デジタル大辞泉の解説

アルトー(Antonin Artaud)

[1896~1948]フランス詩人・俳優・演出家バリ島の演劇に霊感を受け、演劇理論書「演劇とその分身」を発表。その理論は1960年代以降の演劇に影響を与えた。

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百科事典マイペディアの解説

アルトー

フランスの詩人,演劇家。5歳のとき髄膜炎を患い,以後も神経の病に苦しむ。1920年ころより俳優活動を始めるとともに詩を書き,一時シュルレアリスム運動に参加するがブルトンらと衝突。
→関連項目ジャリバルチュスバロー

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世界大百科事典 第2版の解説

アルトー【Antonin Artaud】

1896‐1948
フランスの詩人,演出家。1920年に故郷マルセイユからパリに出,絵画評,劇評,詩を小雑誌に発表。演劇改革運動の担い手の一人C.デュランアトリエ座で俳優としてデビュー。シュルレアリスム運動に参加。幼少時の脳髄膜炎の後遺症に苦しみ麻薬を常用するが,《NRF(新フランス評論)》編集長J.リビエールとの《往復書簡》(1924),《冥府の臍》《神経の秤》(ともに1925)は,人間存在の基部における破壊の体験,言語の〈不能力〉について,骨髄から発する〈肉〉の叫びに満ちた告白である。

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大辞林 第三版の解説

アルトー【Antonin Artaud】

1896~1948) フランスの詩人・演劇理論家・思想家。シュールレアリスムに参加するが、のち絶縁。肉体言語や残酷演劇の概念を提唱、西欧演劇の根本的変革を企て、以後の演劇に強い影響を残した。著「演劇とその分身」「社会の自殺者ファン=ゴッホ」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

アルトー
あるとー
Antonin Artaud
(1896―1948)

フランスの詩人、俳優、演出家。9月4日マルセイユの海運業の旧家に生まれる。5歳で髄膜炎にかかり、以後神経障害に苦しみ続けながら、高等中学時代から詩作を始める。1920年に治療のためパリに上り、リュニエ・ポーらと知り合い、翌1921年制作座で初舞台を踏み、デュランやピトエフの劇団に加わり、映画にも出演する。同時に詩集『空の双六(すごろく)』(1923)、『冥府(めいふ)の臍(へそ)』『神経の秤(はかり)』(1925)を発表。『NRF(エヌエルエフ)(新フランス評論)』の編集長リビエールとの『往復書簡』(1924)では「魂の中心的崩壊」を訴える。シュルレアリスム運動に加わったのち、1927年にビトラック、アロンとともに「ジャリ劇場」を創立して演劇の改革を叫ぶ。また『裁かるるジャンヌ』などの映画に出演しながら、「残酷演劇」の構想を固め、1935年に自作の『チェンチ一族』を演出、主演し、その実現を図る。1936年に文化の原点を求めてメキシコの先住民タラウマラを訪れるが、翌1937年アイルランド旅行中に錯乱状態となり、以後は精神科病院内で膨大な著作を残した。とくに『ファン・ゴッホ、社会の自殺者』(1947)はサント・ブーブ賞を受け、1930年代の講演や評論を集めた『演劇とその分身』(1938)も後年高く評価される。1948年3月4日パリ近郊のイブリの療養所で直腸癌(がん)のため孤独のうちに死ぬ。
 近代合理主義に毒された西欧文明を否定し、東洋演劇や呪術(じゅじゅつ)など、演劇をその発生の根源にさかのぼって考え直し、功利的な言語から解放された表現に高めようとするその演劇論は、第二次世界大戦後の前衛劇などに大きな影響を与えた。[安堂信也]
『アルトー著、安堂信也訳『演劇とその形而上学』(1965・白水社) ▽ブロー著、安堂信也訳『アントナン・アルトー』(1976・白水社)』

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世界大百科事典内のアルトーの言及

【演劇】より

…先に触れた多型的な関係は,市(いち)の露天の見世物の演劇体験にも通じるものであるが,それをたとえばムヌーシュキンAriane Mnouchkine(1939‐ )の太陽劇団は,《1789年》(1970)などで,広い弾薬庫の空間を使って活用してみせた。逆に,A.アルトーが残酷演劇の一要素として主張した,文字どおりに演戯が攻撃的に観客を取り囲む形は,もはや見ること自体の破壊であり,演劇を呪術的な〈行為〉に変貌させようとする。 ともあれ,舞台上に見せられているものがそのままで全体の縮図,あるいは全体に重なるものだという関係(それを修辞学では隠喩(メタフォールあるいはメタファー)の関係という)であるか,それともそこに見せられているものは部分であり,部分から全体を,見る側が構成する必要がある関係(換喩(メトニミー)の関係)であるかという対比が存在することは指摘しておいてもよいだろう。…

【残酷演劇】より

…フランスの詩人・演出家・俳優A.アルトーによってもたらされた演劇理念。1920年に俳優としてデビューしたアルトーは,残酷演劇実践の試みであった《チェンチ一族》の上演失敗(1935)など,実際の舞台には成果は残さず,38年に出版された〈残酷演劇宣言〉(1932発表)を含む理論書《演劇とその分身Le théâtre et son double》によって,書物を通じて新しい演劇観を啓示し,のちの演劇に多大な影響を与えた。…

【前衛劇】より

…1917年に上演されたG.アポリネールのシュルレアリスム劇《ティレジアスの乳房》は,妻が男性に性転換し,一方女性になった夫が4万0049人の赤ん坊を生むという奇怪な内容だが,その独創性で50年代演劇の先駆となった。リブモン・デセーニュ,レーモン・ルーセルなどの作品,あるいは《ユビュ王》初演30年後に結成された〈アルフレッド・ジャリ劇場〉の推進者R.ビトラックA.アルトーなどの実験的作品がその後に続く。とくにアルトーが主張した演劇における舞台言語の読み直しや,分節言語ではなく肉体言語によって空間を肉体的=物理的に埋めようとする残酷演劇の試みは,50年代前衛劇や,日本のいわゆる〈アングラ演劇〉なども含めて,その後の世界的な運動の高まりの中でしばしば見られた試みとほとんど共通のものであり,その先取りであったということができよう。…

【全体演劇】より

…全体演劇とは,いわゆる心理劇のようなせりふ中心の〈部分的演劇〉に対して,演劇本来の理想の姿をまるごとの人間の生の芸術としてとらえ,そのような演劇の全体性を,具体的には台本,装置,舞踊,マイム,映像,音響,運動など,およそありとあらゆる舞台の手段を完全に利用して,一つの新しい演劇独自の言語を創造することによって回復しようとする試みである。このような演劇理念は,1910年代以降に,革命期のロシア・アバンギャルド演劇,イタリアの未来派,ドイツ表現主義,バウハウスの運動,シュルレアリスム運動などの中に部分的に見られたが,未曾有の大胆さによる全体性の概念はフランスの詩人・演出家A.アルトーが説いた〈残酷演劇〉によって結実する。彼はもともとシュルレアリスム運動の首唱者だったが,このような演劇手段の無限定な解放の中で,彼は現代文明の生活様式の底に沈澱している呪術的祭儀的感情と価値とをすくい上げ,始原のものとの接触を探求したのであった。…

【俳優】より

…また,イギリスのE.H.G.クレーグやスイス生れのA.アッピア,ドイツのM.ラインハルトらがそれぞれに唱えた演技論・俳優論は重要であるし,フランスではJ.コポーを筆頭にC.デュランやL.ジュベらによって詩的演技が提唱・実践された。さらには,A.アルトーによる残酷演劇,またB.ブレヒトによる革新的な演劇論・演技論が新しい地平を切り拓いている。なかでも最後の2人,すなわちアルトーとブレヒトの問題提起は,現在から未来に向けての展望を得ようとする際,ことのほか重要なものであると言ってよい。…

※「アルトー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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