翻訳|amphetamine
中枢神経(脳と脊髄)を興奮させる薬の代表的なもの。プロパミンpropamineともいう。化学名はフェニルアミノプロパン。1930年にアメリカで発見され,3年後にこれがエフェドリンの3倍も強い中枢神経興奮作用をもっていることがわかった。35年に初めて臨床で使われ,ナルコレプシー(発作的眠り病)に効いた。やせ薬や,子どもの多動症(微細脳損傷,MBD)を抑える薬としても使われるが,うつ病には効かない。連用すると精神分裂症に似た症状をひきおこす。しだいに増量しないと効かなくなり(これを耐性上昇という),薬を用いたくなる(これを精神的依存という)が,連用を急にやめても発熱とか痙攣(けいれん)などの身体的異常はおきない。精神的依存を利用して,暴力団が覚醒剤として売りつけて資金源にしたり,薬を餌として逃亡を防ぐのに使ったりしており,社会問題となっている。30mg以上の大量を与えると急性中毒になり,不安,不眠,緊張感,錯乱,幻覚,頻脈,痙攣などが現れる。120mgを注射すると死ぬが,連用者では耐性が上昇しているので500mgでも死なない。
執筆者:小林 司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
1-phenylpropan-2-amine.C9H13N(135.20).C6H5CH2(NH2)CH3.ベンゼドリン(benzedrine)ともいう.覚せい剤の一つ.ベンジルメチルケトンのオキシムを還元するか,またはホルムアミドと反応させてつくられる.アミン臭のある液体.沸点200~203 ℃.硫酸塩(融点320~322 ℃ 分解)は白色の結晶で,水に溶けやすく,中枢神経,交感神経の興奮作用をもつ.わが国では製造・使用が禁止されているが,外国ではやせ薬として使われる.[CAS 300-62-9][別用語参照]メタンフェタミン
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…覚醒剤は俗称ないし法律用語であって,薬理学では中枢神経系興奮薬に入れる。日本の覚せい剤取締法ではアンフェタミン(商品名ベンゼドリン)とメトアンフェタミン(商品名ヒロポン,ペルビチン)とを指す。これら覚醒作用をもっているアミンを,ドイツ学派は覚醒アミンと呼ぶが,英米学派ではとくに命名をしていない。…
…精神展開体験とは,自己内界に注意が向かい,思考力や感覚が高まったと感じ,自他の境が不明になり,人類ないし宇宙への合体感を意味する。精神展開薬は化学的に,(1)β‐フェネチルアミン(メスカリン,アンフェタミンなど),(2)インドール系物質(ジメチルトリプタミン(DMT),サイロシビン,ハルミンなど),(3)副交感神経薬(アトロピン,フェンサイクリジンなど),(4)リゼルギン酸誘導体(LSD‐25など),(5)その他(笑気,ナツメグ,マリファナ,バナナの皮など)に分類されるが,作用の強弱によってマイナー・サイケデリクスとメジャー・サイケデリクス(メスカリン,LSD,サイロシビン,DMT,STP,JB‐329など)とに二大別されることもある。
[幻覚薬の研究史]
中央アメリカでは古くからペヨーテなどの幻覚を起こす植物が知られていて宗教や儀式に使われてきた。…
…1g以上の大量では神経過敏,震えなどの症状を経て痙攣(けいれん)を誘発する。(2)覚醒剤 アンフェタミン,メタンフェタミンなどで,いずれも精神機能の亢進を特徴とする中枢興奮作用を有する。眠気を去り,疲労感を除き,精神的抑鬱(よくうつ)状態を回復する効果を示す。…
…(1)直接受容体に結合して作用を現す薬物(直接型作用薬)で,ノルアドレナリン,アドレナリン,イソプロテレノール,メトキサミン,フェニレフリンなどがこれに属する。(2)交感神経終末からノルアドレナリンを放出させて作用を現す薬物(間接型作用薬)で,チラミン,アンフェタミンなどがある。(3)上に述べた(1)(2)の両作用を併せもつ薬物(中間型作用薬)で,エフェドリンはこれに属する。…
※「アンフェタミン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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