アンモニアNH3の水溶液。工業的には安水ともいう。日本で市販されている濃アンモニア水は28%(約15mol/l),日本薬局方のアンモニア水は10%のアンモニアを含む。アンモニアガスを,冷却しながら蒸留水に溶かして製する。市販品は保存中に大気中の二酸化炭素を吸収して,一部が炭酸塩に変化していることが多いため,厳密な目的に使用する場合には,水酸化バリウムを加えて炭酸塩を固定し,加熱してアンモニアガスを追い出し,これを二酸化炭素を含まない水に吸収させて精製する。強いアンモニア臭と刺激性の味をもつ液体で,アルカリ性を呈する。これは,
NH3+H2O⇄(NH3・H2O)⇄NH4⁺+OH⁻
のような,溶媒(水)分子とアンモニアとの間のプロトン(H⁺)移行反応(いわゆる加水分解)により生じた水酸化物イオンOH⁻による。溶存アンモニア全量を基準にした塩基解離定数は25℃で1.75×10⁻5mol/lと小さく,見かけ上弱塩基であるが,水和物を基準にした場合は水酸化カリウムKOHに対応する強塩基とみなすことができる。NH4OHなる分子の存在には問題があり,NH3・OH2⇄NH4OHのようなきわめて速いプロトン移行が観測されている。密度は純水より小さく,比重によってNH3含量を求めることができる。15℃の比重0.960(NH39.91%),0.926(19.87%),0.898(30.37%)。分析試薬(沈殿剤,pH緩衝剤など)として重要であり,衣類のしみ抜き,毛織物洗濯用,虫さされの際の酸中和剤など外用薬としても利用される。
目に入ると激しく粘膜を傷めるほどの刺激性があるので吸い込んではならない。そのほかアンモニアに対すると同様の注意が必要である。また密栓保存時は,温度が上昇するとアンモニアガス圧が急上昇して,栓が抜けたり,爆発したりすることがあるから,30℃以下の冷所に置くことがたいせつである。
執筆者:藤本 昌利
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…化学式NH4OHで表される。しかしこの化学式をもつ化合物は水溶液の中でのみ存在すると,長い間,記述されていたが,アンモニア水の中にこの式に対応する水酸化物の存在することは確認されていない。また,低温でアンモニア水からNH3・H2Oの組成をもつ無色六方晶系,融点-79.01℃の結晶が得られているが,赤外スペクトルなどによってこの結晶中にNH4+イオンの存在することは否定されており,この結晶は水酸化アンモニウムNH4OHではない。…
※「アンモニア水」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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