アーク炉(読み)アークロ(その他表記)arc furnace

デジタル大辞泉 「アーク炉」の意味・読み・例文・類語

アーク‐ろ【アーク炉】

アーク放電を利用した電気炉の一。高熱を得やすく温度制御も容易なため、融点が高い金属の溶解合金製造などに用いられる。電弧炉

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精選版 日本国語大辞典 「アーク炉」の意味・読み・例文・類語

アーク‐ろ【アーク炉】

  1. 〘 名詞 〙 ( アークは[英語] arc ) アーク放電による高熱を利用した電気炉。空中窒素の固定、銅アルミニウム合金の溶解、電気製鋼などに用いられる。弧光炉。電弧炉。

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改訂新版 世界大百科事典 「アーク炉」の意味・わかりやすい解説

アーク炉 (アークろ)
arc furnace

電弧炉ともいう。アーク加熱によって金属材料や耐火物などを溶解する電気炉。大別すると,通常,炉の上部から装入された2~3本の電極間に被熱物を通じてアークを発生させ,被熱物を溶解ないし加熱する直接式アーク炉と,溶解される金属の上方にある2本の電極間にアークを発生させ,その放射熱によって溶解する間接式アーク炉の2種類がある。

代表的なものに1900年フランス人P.L.T.エルーによって完成されたエルー炉がある(図1)。炉内にスクラップ屑鉄(くずてつ))を装入し,これと3本の人造黒鉛電極との間に三相交流アークを発生させ鋼をつくる。電極の昇降操作によって必要なアーク電圧を得,アーク電流およびアーク電力の調節が容易で熱効率もよい。鋼の溶解ないし精錬設備として最も普及しており,アーク炉製鋼法(電気製鋼法ともいう)は転炉製鋼法と並んで現在の製鋼法の主流の一つである。日本では現在の粗鋼生産量の25%以上をアーク炉によって生産している。転炉に比べて多額な設備投資を必要とせず,比較的簡単に精錬を行える特徴を有している。高品質の特殊鋼,また鋳鋼や鍛造用の鋼に適しているとされてきたが,1960年代から適用鋼種を広げ,生産性よく普通鋼をつくることができ,あらゆる鋼種が製造可能となっている。このように高品質から高生産性へと進展してきた最大の理由は,大電力操業ないし超大電力操業の実現,ならびに炉の大型化による効果である。現在,製鋼用には容量(1バッチの出鋼量)が数十t程度の炉が汎用されており,最大では200tの炉もある。鋳鋼の溶解には数t程度の炉が最も多く使われている。製鋼用アーク炉では,スクラップの溶解過程で溶け落ちるスクラップが瞬間的に電極間をたびたび短絡し,送配電線の電圧が変動するため,アーク炉と同一配電線につながれている一般需要家の電灯やテレビ受像機がちらつくフリッカーを起こすことがある。このため,電源系統のリアクタンス分の補償,電圧降下の補償,アーク炉負荷の無効電力変動分の補償などの防止対策がとられている。鋼以外にも,アルミナ,マグネシアなどは一部エルー炉によって溶解され,電融アルミナ,電融マグネシアとして高品質な耐火物の原料が生産されている。

代表的なものには,主として銅合金の溶解に使用される揺動アーク炉がある。構造は図2に示すように,ドラム型の炉体の水平な中心軸上に2本の電極を置き,炉体は中心軸の周りに任意の振幅で揺動できるようになっている。電極間のアーク熱は,溶解する金属と炉壁に放射されるが,炉の揺動によって炉壁の熱も溶融金属に与えることができ,熱効率がよく,また,かくはん(攪拌)によって金属の組成も均一になるなどの特徴がある。

 なお,フェロアロイ,銅,亜鉛などの製錬に使われる電気炉は,構造が製鋼用アーク炉に似ているので,国際的にはアーク炉の範ちゅうに入れるように決められ,製錬炉と呼ばれる。製錬炉は,電極から電流を導入し,炉内に装入された被熱材料の電気抵抗熱を主体として熱化学反応を行わせる炉で,原理的には抵抗加熱に入る。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アーク炉」の意味・わかりやすい解説

アーク炉
あーくろ
arc furnace

電極間または電極―被加熱物間に電気アークを発生させ、その熱により目的物を加熱する方式の電気炉。電弧(でんこ)炉ともいう。前者は電極間アークからの放射熱で加熱するから間接加熱式アーク炉とよばれ、後者は被加熱物にも電流が流れ、その抵抗発熱による加熱もあるので直接加熱式アーク炉とよばれる。これら従来のアーク炉と原理的に異なるものとして、アーク放電の陽光柱の周囲を気流で絞るときに発生する高温度プラズマの熱を利用したプラズマアーク炉もある。アーク炉は温度制御が容易で高温が得られやすく、熱源からの不純物の混入もない。したがって製鋼や合金鉄製造、各種合金の溶解、高温化学反応用の炉として広く用いられている。製鋼には三相電力によるエルー式アーク炉が用いられ、近年、大型化および高電力操業(HP,UHP=Ultra High Power)により生産性が向上し、国内粗鋼生産に電気炉鋼の占める割合は、2008年の時点で約25%に達している。

[井口泰孝・原善四郎]


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化学辞典 第2版 「アーク炉」の解説

アーク炉
アークロ
arc furnace

炉内に黒鉛棒を2本入れ,これに高電圧をかけアークを飛ばして熱源とする炉をいうが,工業的に広く用いられているアーク炉は,消耗電極型真空アーク炉である.このような炉は,高級な鋼や高純度チタンやジルコニウムの製造によく用いられている.アークで融解製錬しようとする金属を上に保持してマイナスの電極とし,真空中あるいは不活性ガス雰囲気中で水冷銅鋳型をプラス極として,低電圧,高電流のアークを飛ばして融解し,鋳型中に湯がたまるに従い電極棒を降下させていく.アークの直下の金属は溶融していて,いわゆるメタルプールをつくり下のほうから徐々に凝固していく.真空中で融解を行えば電極先端から滴下し,メタルプールをつくっている間に脱ガスなどが進行し,精錬反応が行われる.安定なアークを得るために,上部電極の下降の自動装置や鋳型のまわりの直流ソレノイドによって磁場をつくる装置を設置するのが普通である.融湯を適当な形状の鋳型に鋳込むことができるように工夫されたスカル炉(skul furnace)もこのアーク炉の一種である.また,製鋼用電気炉もアーク炉とよばれている.[別用語参照]真空冶金

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アーク炉」の意味・わかりやすい解説

アーク炉
アークろ
arc furnace

アークの高熱を利用して金属材料の溶解,溶錬に用いる炉。種々の形式があるが,工業的には次の3種が多く用いられる。
(1) エルー炉  1899年 H.エルーの発明で,現在製鋼用として最も普及している。浅い椀形の炉床に対し天井から3本の黒鉛電極が垂下する三相炉で,容量は 20~50t程度が多いが,100t以上の大型もある。交流のみならず,高圧直流式もエネルギー効率のよさから現在使われている。
(2) デトロイト炉 回転揺動する円筒形炉体で,中心に水平な相対電極をもつ単相炉である。銅合金の溶製に多く使われ,容量は2~10t程度の小型が多い。
(3) ジロー炉 炉底の固定電極と上方から垂下する対電極とをもつ単相炉で,特殊の場合にしか使われない。
以上いずれも炉体を傾けて鉱滓と溶融金属を流出する傾注式である。真空溶解に使うアーク炉はやや特殊で,黒鉛電極,タングステン電極,また特に汚染を避けるため溶解金属と同質の消耗電極 (この消耗電極による方法を VAR,Vacuum Arc Remeltingと呼ぶ) などが用いられる。

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百科事典マイペディア 「アーク炉」の意味・わかりやすい解説

アーク炉【アークろ】

電弧炉とも。黒鉛電極と装入物との間(直接式)または電極間(間接式)にアークを飛ばして加熱する電気炉。特殊鋼・鋳鋼の製造などに広く使用。エルー式が大型直接アーク炉の代表例。装入物の抵抗熱を併用する電弧抵抗炉もある。
→関連項目アーク放電

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世界大百科事典(旧版)内のアーク炉の言及

【電気炉】より

…電気炉は燃料炉に比べ,非常な高温に到達させることができる点や操業が容易である点がすぐれている。電気炉は原理的には電気エネルギーを熱に変換して被熱体にそれを伝えるものであり,熱を伝える方式により,抵抗炉,アーク炉,誘導炉の三つに大別できる。
[抵抗炉]
 抵抗体に電流を流して発熱させる方式の電気炉で,直接抵抗炉と間接抵抗炉とがある。…

※「アーク炉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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