翻訳|art paper
印刷用紙のうち,表面に白色顔料を塗布して印刷適性を高めた塗工紙coated paperの一種。上質紙を原紙として塗工液を片面に20g/m2前後塗布した高級紙で,豪華な美術本,高級パンフレット類,週刊誌の表紙,ラベルなどに使用される。塗工液は顔料,接着剤,補助薬品(分散剤や耐水化剤)がほぼ100:20:5の割合から成り,顔料は粒径1~2μmのクレー,炭酸カルシウム,二酸化チタン,サチンホワイト(硫酸アルミニウムと石灰乳からつくられる白色顔料)など高白色で不透明のものが用いられる。接着剤は顔料粒子を接着するとともに塗工層を原紙に接着固定する役割をもち,以前はカゼインが用いられていたが合成ラテックスやポリビニルアルコールなどに代わりつつある。適度にカレンダーがけを行って光沢をもたせたものや,つや消ししたマット調のものもある。印刷の網点の再現性の良さに関しては,塗工液10g/m2前後のコート紙とは歴然とした差があり,高級印刷に適している。
執筆者:臼田 誠人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
塗工印刷用紙(コーテッドペーパー)の一種.鉱物性顔料と接着剤とを混合したものを原紙の表面に塗工し,乾燥したのち,ロール間に紙を通して表面を圧密化するスーパーカレンダーなどの装置で平滑性,光沢性を付与した紙.両面に塗工したもの,片面のみ塗工したもの,つや消し仕上げしたものがある.鉱物性顔料にはカオリン,クレー,炭酸カルシウム,チタン白などが,接着剤にはカゼイン,デンプン,ラテックスなどが用いられる.印刷適性にすぐれており,写真版,原色版の印刷に使用される.塗工印刷用紙には,ほかにコート紙,軽量コート紙,微塗工紙および特殊コート紙がある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
カオリンなどの鉱物性顔料とカゼインまたは合成接着剤などとを混合して濃厚な塗布液をつくり、これを原紙の表面に塗布して乾燥し、スーパーカレンダー(光沢機の一種)などで光沢をつけた高級なコーテッドペーパー(塗被紙)。原紙としては上質紙を用い、一般のコーテッドペーパーに比べ厚めに塗布を行うなどにより高度の印刷性をもたせる。片面に塗布したもの、両面に塗布したもの、つや消し仕上げを行ったものなどがある。写真版、原色版などの高級網版(あみはん)印刷に多く用いられる。
[御田昭雄 2016年4月18日]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…非塗工紙にはそのほかに,雑誌のグラビア写真印刷に用いるグラビア用紙,漫画雑誌本文に使用される印刷泉貨紙がある。塗工紙は塗工液の塗布量で分類し,塗布量が1m2当り20g前後のものをアート紙,10g前後のものをコート紙,5g前後のものを軽量コート紙と呼んでいる。【臼田 誠人】。…
…ティッシュペーパーが一方向に破れ易いのはこの例である。高級印刷をするアート紙は紙の上に粒度の細かい顔料を結合剤と混ぜて塗って高い光沢と平滑性を持たせている。
【紙の生産量】
森林資源に恵まれた北欧,北アメリカ,ロシア連邦,それに日本,中国,ドイツ,フランスが世界の主要な紙類の生産国であり,なかでもアメリカは他を引き離して多い生産量および消費量を有し世界総生産量のほぼ1/3を生産している。…
…そこで,直径1μm以下の微粒子状クレーや炭酸カルシウムなどを結合剤とともに水に分散させて紙の表面に塗り,平滑性を向上させたものが塗工紙である。上質紙もしくは中質紙を基紙とし,塗工液を10g/m2前後塗布したものがコート紙で,これに対して,上質紙に20g/m2前後塗布した高級塗工紙をアート紙と呼んで区別する。アート紙に比べて表面の平滑性は劣るが,価格的に安く,しかも印刷効果を著しく改善できるため,コート紙の需要は全塗工紙の70%弱を占め,さほど高品質を要求しないちらし,雑誌の表紙,口絵などに用いられている。…
※「アート紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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