デジタル大辞泉 「イオ」の意味・読み・例文・類語
イオ(Iō)
(Io)木星の第1衛星で、すべての衛星のうち5番目に木星に近い軌道を回る。1610年にガリレオ=ガリレイが発見。名はに由来。1979年に探査機ボイジャーが火山活動を確認。木星の強い引力による地殻の歪みによるものと思われる。直径は約3600キロ(地球の約0.29倍)。平均表面温度はセ氏マイナス140度。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
(1)木星の第I衛星。1610年,G.ガリレイによって発見され,ギリシア神話の女神官イオにちなんで名付けられた。木星中心より42万1800km(木星半径の5.91倍)のところをほぼ円軌道を描いて,1.769138日で公転している。半径は1816km,質量は8.920×1025g(木星の4.6967×10⁻5倍)で,平均密度は3.56g/cm3と求められる。木星の電波(デカメートル波)バーストの起こる頻度がイオの位置と関係していることで以前から話題の多い衛星であったが,1979年3月と7月の惑星探査機ボエジャー1,2号の観測によってその正体がはっきりした。ボエジャー1号はイオの硫黄に覆われた赤い姿を写し出し,同時に火山の噴火をとらえることに成功した。木星の強い潮汐力と衛星相互間の引力によって生じたひずみが内部で熱エネルギーに変わるのが,その活動性の原因である。イオの表面には少なくとも8個の活火山があり,秒速1kmで高さ250kmにまで硫黄を主とした噴出物をまきちらしている。噴出物はイオの軌道上に広がり,ナトリウムやカリウムの雲の存在は地球からも観測される。硫黄やナトリウム,カリウムは木星の磁場や放射線帯と相互作用を起こしつつ軌道の内側に広がっていき,ついには木星面にも達していると考えられる。
(2)小惑星85番。光度10.5等。1865年9月19日ピータースPetersによって発見された。
執筆者:田中 済
ギリシア神話で,アルゴスのヘラ女神の女神官。彼女の父イナコスはアルゴスの初代の王とも川の神ともいわれる。イオはゼウスに愛され,神に身をまかせたが,ゼウスは妃ヘラの嫉妬を避けるために,彼女を白い牝牛に変えた。しかしヘラはこの牝牛に疑いをかけ,夫からこれをもらいうけて,百眼の怪物アルゴスArgos(彼はまたパノプテスPanoptēs(〈すべてを見る者〉の意)とあだ名される)に日夜怠りなく見張りさせた。そこでゼウスはヘルメス神に命じてアルゴスを殺させると,ヘラはアブ(虻)を送ってイオを苦しめたので,彼女は狂乱のうちに諸国をさまよい歩き,ヨーロッパからアジアへ渡り(ボスポロス(〈牝牛の渡し〉の意)海峡の名のおこり),最後にエジプトに着いた。ここで彼女はゼウスによって人間の姿に戻され,のちにエジプト王となってメンフィス市を建設する一子エパフォスEpaphosを産んだという。彼女はしばしばエジプトの女神イシスと同一視された。
執筆者:水谷 智洋
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…ただハーンがこのような立論をするほど,古代オリエント世界において,牛が農耕儀礼で犠牲にされ,神話上の神シンボルに伴って登場したことは確かなことである。 豊饒の女神,例えばフェニキアのアスタルテ,バビロニアのイシュタル,古代エジプトのイシス,ギリシアのイオはすべて月の女神とみなされ,かつ雌牛と密接なかかわりをもっている。農耕にまつわる祭儀や神話と牛とのかかわりは,前2千年紀後半,東地中海のカナンの地に栄えたウガリト王国の神話に登場するバアルとアナトの物語の中にみごとに示されている。…
※「イオ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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