地球磁場にほぼ定常的に捕捉されたエネルギーの高い粒子群の総称で,約1000kmの高度から地心距離約10RE(REは地球半径)にわたる領域に存在する(図)。1958年に打ち上げられたアメリカの最初の人工衛星エクスプローラー1号から3号,パイオニア3,4号などの初期の人工衛星観測により,バン・アレンJames Alfred Van Allenのグループがその存在を明らかにしたので,バン・アレン帯とも呼ばれている。地球の周辺に,地表の自然放射線強度の1億倍以上もの放射線帯が存在することは,それまでまったく予想されておらず,衛星観測初期の重要な発見の一つとして注目された。
放射線帯を構成する粒子は,おもに数十keV以上のエネルギーをもつ陽子と電子であるが,α粒子やその他の原子核もわずかであるが観測される。放射線強度やその空間分布はエネルギーや成分によって変化し,磁気嵐の発達などにより時間的にも変動するが,平均的には陽子と電子でいくつかの異なった特徴が見られる。陽子の分布には極大が一つあり,エネルギーが高いものほど極大の位置は地球に近い。例えば1MeVの陽子は約3REに極大をもつが,500MeVでは約1.5REで極大になる。電子成分の分布の特徴は,エネルギーの低いものが大部分で5MeVを超えるものがほとんどないことと,分布が二つの極大をもつことである。このため2~3REに分布の谷があり,これを境に地球側を内帯,外側を外帯ともいう。内帯に比べて外帯の時間変動は大きい。
放射線帯を構成する粒子は,地球磁場に閉じ込められ,磁力線に沿って南北に往復運動しながら地球を周回している。周回運動の速さはほぼエネルギーに比例し,1周の周期は数分から数時間程度である。捕捉粒子の寿命は,おもに地球大気の影響で規制され,実験的に,2MeVの電子の寿命は内帯で約1年,外帯で約1ヵ月程度と求められている。
放射線帯の成因としては,現在次の二つの機構が有力視されている。その一つは,宇宙線アルベド中性子崩壊説といわれるもので,宇宙線によって大気中につくられた中性子の一部が磁気圏へ飛び出す途中で,陽子と電子と中性微子に崩壊し地球磁場に捕捉されるという考えである。この機構では全放射線帯の生成を説明できないが,内帯の高エネルギー成分はこの機構によると考えられている。
もう一つは,磁場や電場の変動により粒子の軌道が乱れ,統計的な結果として軌道が徐々に内側に移っていく効果を生ずる機構である。変動の原因としては,太陽風の変動に伴う磁気圏の圧縮や膨張などがあり,このような変動の場合は,磁気モーメントが保存されるため,磁場の弱い所から内側の強い場所に移ると磁場の強さに比例してエネルギーが増加する。したがって内側ほど平均エネルギーが大きくなる。
放射線帯は,地球磁気圏ばかりでなく,木星や土星の巨大磁気圏内にも存在することが確かめられている。
執筆者:国分 征
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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