イギリス自治領(読み)イギリスじちりょう(その他表記)British Dominions

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イギリス自治領」の意味・わかりやすい解説

イギリス自治領
イギリスじちりょう
British Dominions

イギリス帝国内における自治領。アメリカ合衆国の独立後,イギリス帝国の白人植民地に対して,本国財政のための恣意的な課税は行われなくなり,植民地立法議会が存在するようになったが,行政権は依然として本国の君主あるいは所管大臣に対してのみ責任を負う総督の手に握られていた。これに対して自治の要求は,まず 1830年代のカナダにおいて高まり,ダラム報告に基づき 40年代に内政に関する自治権が認められるにいたった。数年後,オーストラリアニュージーランドもカナダに続いて同様の権利を獲得し,67年には,カナダの主要な4地方が Dominion of Canadaの名称のもとに単一の連邦を構成した。これがイギリス自治領の正式な始りである。その他はやや遅れて,オーストラリア Commonwealth of Australia (1901) ,ニュージーランド Dominion of New Zealand (07) ,南アフリカ Union of South Africa (10) の順に,自治領の公的な資格を得た。なおニューファンドランドは 1917年,単一の自治領として発足し,49年カナダ連邦の一州として統合された。また 21年に成立したアイルランド自由国 Irish Free Stateも,自治領と同じ地位を得た。以上の6自治領は,第1次世界大戦と戦後パリ講和会議をはじめとする一連の国際会議を通じて,外交・軍事上の自主権をも漸次獲得し,31年ウェストミンスター憲章によって,立法上の完全な自主権を本国議会から認められた。ここにイギリス連邦が成立するとともに,これを構成する自治領は,dominionsの代りに member nationsあるいは realmsと呼ばれるようになった。第2次世界大戦後イギリス連邦に新たに加入したアジア=アフリカ旧植民地の独立国家も,自治領ではなく,「構成国」と呼ぶべきであろう。なおアイルランド自由国 (エール) は 49年に,南アフリカは 61年に連邦を離脱した。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「イギリス自治領」の解説

イギリス自治領(イギリスじちりょう)
British Dominions

イギリスの植民地のうち,立法機関と責任政府を有し,内政・外交の両面で完全な自治権を認められ,独立国に準じる地位にあった地域。1867年カナダが最初の自治領になったのを皮切りにして,1901年にオーストラリア,07年にニュージーランド,10年に南アフリカ連邦,17年にニューファンドランド,22年にアイルランド自由国が自治領となり,以上の六つが31年のウェストミンスター憲章でも自治領として認められた。白人植民地に限られることが特徴的である。

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百科事典マイペディア 「イギリス自治領」の意味・わかりやすい解説

イギリス自治領【イギリスじちりょう】

イギリス連邦内で英国王を元首とする独立国の通称。1867年カナダ4州が最初の自治領となり,遅れてオーストラリア(1901年),ニュージーランド(1907年),南アフリカ(1910年)が自治領になり,1931年ウェストミンスター憲章により立法上の完全自主権を得た。しかし現在その厳密な定義は存在しない。

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旺文社世界史事典 三訂版 「イギリス自治領」の解説

イギリス自治領
イギリスじちりょう
British Dominions

総督の支配下にあるが,自治権を与えられて議会ならびに責任政府をもつイギリス植民地
19世紀の自由主義時代,イギリスはアジアでは強力な植民地政策をとったが,白人植民地には外交・国防などを除く地方的問題に関し自治を許した。1867年カナダが,続いてオーストラリア(1901)・ニュージーランド(1907)などが自治領となり,のちイギリス連邦の構成体に組み入れられた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イギリス自治領」の意味・わかりやすい解説

イギリス自治領
いぎりすじちりょう

自治領

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