インドール(読み)いんどーる(英語表記)indole

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デジタル大辞泉 「インドール」の意味・読み・例文・類語

インドール(indole)

ジャスミン油コールタール・腐敗たんぱく質・哺乳類排泄はいせつ物に含まれる物質。複素環式化合物の一種。無色の小葉状結晶。糞臭ふんしゅうの原因であるが、希薄なときは芳香として感じられ、香料の原料。

インドール(Indore)

インド中央部、マディヤプラデシュ州の都市。同州最大の都市であり、商工業の中心地。18世紀にホールカル藩王国の都が置かれ、英国統治時代は軍の駐屯地になった。周辺は綿花地帯が広がり、紡績業が盛ん。藩王の宮殿やコロニアル様式の旧庁舎などがある。

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精選版 日本国語大辞典 「インドール」の意味・読み・例文・類語

インドール

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] indole ) コールタール、ジャスミン油、ネロリ油、腐敗蛋白質、大便などの中にある糞臭のある物質。化学式 C8H7N 無色で葉状または板状の結晶。香料、染料の原料。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「インドール」の意味・わかりやすい解説

インドール(複素環式芳香族化合物)
いんどーる
indole

複素環式芳香族化合物の一種。分子量117、無色の小葉状または板状結晶、融点53℃、沸点253℃。不快臭がありスカトール(メチルインドール)とともに糞臭(ふんしゅう)の原因となっているが、純粋で微量の場合は芳香がある。コールタール中や、ジャスミンなどの植物性の香油、腐敗タンパク質、哺乳(ほにゅう)動物の排出物中に存在する。トリプトファン、ある種のアルカロイドインジゴなどの構造の骨格をなす物質でもある。

 1866年ドイツの化学者バイヤーが、インジゴを亜鉛末と蒸留して還元することにより初めて得たものである。この発見はインジゴの構造決定に寄与するものであったが、同時に染料の化学合成への道を開くものでもあった。インドールは生物学的にはトリプトファンの代謝に関係する重要な物質の一つである。細菌やカビ類ではトリプトファンシンターゼ(トリプトファン生成酵素)という酵素の作用で、インドールとセリンからトリプトファンが合成される。また大腸菌などでは、トリプトファンがトリプトファナーゼという酵素によって分解を受けると、インドールがピルビン酸アンモニアとともに生成される。動物ではこのような反応はみいだされていない。哺乳動物の排出物中にインドールやその誘導体がみいだされるのは、その動物組織によって形成されたものではなく、腸内バクテリアの作用によるものと考えられている。ジャスミンやネロリ油などの花の精油の調合、染料やアルカロイドを合成する原料として用いられる。

[飯島道子]



インドール(インド)
いんどーる
Indore

インド中部、マディヤ・プラデシュ州西部にある商工業都市。人口159万7441、周辺部を含む人口163万9044(2001)。18世紀にはマラータ藩王国の都として、19世紀にはインドール藩王州の州都として栄えた。周辺のマルワ台地は重要な綿花地帯になっており、19世紀後半から、綿紡績、綿織物工場が数多く建設され、現在では州都のボパールをしのぐ商工業の中心地となっている。チャンバル川の支流サラスバチ、カン両河川に沿う台地上に位置し、市街地はムンバイボンベイ)とデリーを結ぶ国道3号や鉄道を中心として形成され、工業地域、商業地域などが明瞭(めいりょう)に識別でき、インドでは珍しく都市計画の進んだ都市として知られる。

[林 正久]

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改訂新版 世界大百科事典 「インドール」の意味・わかりやすい解説

インドール
indole



複素環式芳香族化合物の一つで,2,3-ベンゾピロール,1-アザインデン,1-ベンズアゾールなどと呼ばれる。1866年J.F.W.A.vonバイヤーがインジゴの構造研究の際はじめて見いだし,インジゴにちなみ命名された。コールタール,ジャスミン油などの花精油,哺乳類排出物などの中に存在する。スカトールとともに糞臭の原因になっているが,純粋で微量の場合には芳香をもつ。揮発性の無色の葉状晶,融点53℃,沸点253℃。冷水には難溶であるが熱水には溶け,アルコール,エーテルベンゼンリグロインなどにも可溶。1位の水素はかなり酸性があり,ナトリウム塩ができ,ヨウ化メチルとの反応で1-メチルインドールとなる。求電子試薬は一般に3位で反応し,3位がふさがっていると2位に置換基が入る。アルデヒドケトン,またはケトン酸フェニルヒドラゾンを塩化亜鉛,塩化銅(II)などを縮合剤として閉環させるフィッシャー法で合成する。誘導体は天然に多く存在し,代表的なものとしてはトリプトファン(必須アミノ酸),3-インドリル酢酸(ヘテロオーキシンともいい,植物生長ホルモンの一つ),インジゴ(染料)などがあり,医薬品として重要なストリキニーネ,レセルピン(トランキライザー)にも含まれる。これらの合成原料とされるほか,香料用の精油の調合にも用いられる。
執筆者:


インドール
Indore

インド中部,マディヤ・プラデーシュ州西部の同名県の県都。ガンガー(ガンジス)川中流域から西海岸に向かう交通路のデカン高原上の要衝で,人口159万7441(2001)。ムガル帝国の衰退期,1733年にマルハール・ラオ・ホールカルが,マラーター人のペーシュワー(宰相)から領地を奪い都を定めた。19世紀に入りイギリス勢力と対立が進むなかで,1818年には東インド会社保護下のホールカル藩王国の主都となった。その後,戦略上の要地のため,イギリス・インド政庁の〈総督代理〉と称する政治顧問とイギリス軍駐屯部隊が置かれ,この地域一帯のイギリス支配権力の拠点の一つとして栄えた。付近一帯にはデカン高原の黒色土地帯が広がり,19世紀後半より綿花栽培が普及し,それとともに綿紡績業も発達して,中央インドではナーグプルに匹敵する重要な商工業都市に成長した。市内には豪華なたたずまいで有名なジャイナ教のカンチ寺(別名〈ガラスの寺〉)がある。
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化学辞典 第2版 「インドール」の解説

インドール
インドール
indole

benzo[b]pyrrole.C8H7N(117.15).コールタール,ジャスミン油中に含まれ,またはトリプトファンの代謝生成物として動物の排泄物中に含まれる.工業的には,コールタールの220~270 ℃ 留分から分離するか,アニリンとアセチレンから合成する.また,o-ニトロトルエンとシュウ酸ジエチルを原料としてインドール-2-カルボン酸をつくり,これを脱炭酸して合成される.無色の結晶.融点53 ℃,沸点254 ℃.普通の有機溶媒に可溶.弱酸性化合物でNHのHはpKa 16.97,プロトン化したものはpKa -3.5.λmax 226,282,290 nm(ε 27800,6200,5500).強酸により樹脂化する.特有の悪臭をもつが,希薄溶液にすると特有の芳香になり,香料調合上に不可欠な成分の一つとして利用される.[CAS 120-72-9]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「インドール」の意味・わかりやすい解説

インドール
Indore

インド中部,マディヤプラデーシュ州西部の都市。同州第一の都市で,インドール県の行政庁所在地。ボパールの西南西約 167km,ビンディア山脈北斜面の高度 544mに位置し,サラスワティ川に面する。 1715年に建設され,1815年からインドール藩王国の首都,その後マディヤバーラト藩王州連合の夏季の首都となった。ガンジス川流域平野からムンバイ (ボンベイ) に通じる最短交通路上の要地で,19世紀から州西部の交易の中心地として発展。コムギ,綿花,ラッカセイなどの集散と綿工業が盛ん。インドール大学,アーグラ大学のカレッジなどがあり,幹線鉄道と空路でデリー,ボパール,ムンバイと結ばれている。人口 108万 6673 (1991) 。

インドール
indole

コールタール,ジャスミン油,腐敗蛋白質や人糞中に存在する。特有の強い糞臭をもつが,希薄状態にすると新鮮な花香を感じさせる。無色小葉状晶。融点 53℃。染料,アルカロイドなどの合成原料,ジャスミン油,橙花油などの花精油の調合に使われる。

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百科事典マイペディア 「インドール」の意味・わかりやすい解説

インドール(化学)【インドール】

特異な不快臭のある無色の結晶。融点53℃,沸点253℃。水に難溶,有機溶媒に可溶。コールタール,ジャスミン油,動物の排泄(はいせつ)物中に存在。染料,香油の原料として用いられる。糞(ふん)臭はこれとスカトールによる。(図)
→関連項目腐敗

インドール(地名)【インドール】

インド中部,マディヤ・プラデーシュ州西部の都市。周囲のナルマダー川流域は木材,石材の産地。商業,交通の要地。綿工業が盛んで,鋳鋼工場もある。ホールカル藩王国の主都として19世紀初め以後発展した。196万4086人(2011)。

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栄養・生化学辞典 「インドール」の解説

インドール

 C8H7N (mw117.15).

 タンパク質が腐敗したときに生じる化合物.

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