産業や生活の基盤を形成する施設の総称。インフラと略称され、社会資本と同義語として用いられることが多い。道路、港湾、鉄道、空港、工業用水といった産業基盤となる施設や住宅、環境衛生、上・下水道、公園、学校などの生活基盤となる施設が含まれる。さらに最近では、病院、福祉施設などの厚生福祉施設や情報通信網なども含まれる。
これらの社会資本は通常政府によって整備される。それは、社会資本が次のような性質をもつためである。第一に、それらが生み出すサービスは国民全般に及ぶという性質があり、市場機構に委ねた場合には社会的にみて望ましい量が実現されない。第二に、外部経済効果をもつ財・サービスを供給するために必要な資本の整備を民間に任せると、社会的必要量に比べて不足が生じる。第三に、大規模事業では必要とされる資金が莫大(ばくだい)で、民間だけでは調達が困難であること。最後に第四として、それらのサービスが及ぶ地域において、サービスの供給が独占的な性格を有し、独占の弊害が生じたり、供給が不安定になったりするからである。
また、政府による社会資本への投資は、短期的には需要をつくりだし、長期的には、建設された社会資本が生み出すサービスが国民生活や産業活動に影響を与えることになる。国や地方公共団体などによって実施される行政投資のうち、生活基盤投資は50%弱、産業基盤投資は20%強を占めている。また、生活基盤となる施設はおもにわれわれの生活に身近な市町村によって整備されており、産業基盤となる施設はおもに国と都道府県によって整備されている。
日本は、基本的な社会資本については欧米諸国と比べていちおうの水準に達しているが、かならずしも十分でない分野も残されている。今後は新たな産業の展開を図り、国民生活の質の向上に資するために、情報通信基盤、環境衛生施設等の整備が必要であろう。
[羽田 亨]
本来は下部構造,下部組織の意味であるが,今日最も多く使用されるのは経済の下部構造の意味である。経済には,それ自体では直接的には生産的ではないが,財・サービスの生産に間接的に貢献する資本が存在する。その典型は,道路,水路,港湾,空港等の交通・通信施設,動力・エネルギー関係施設,上下水道・灌漑・排水施設であり,これらは固有の(狭義の)インフラストラクチャーを構成する。これに,学校,博物館等の教育・文化施設,保健・医療・福祉等の施設,国土保全・都市計画関係等の諸施設を加えて,それなしでは生産活動や国民生活が成り立たなくなるような,一般的な経済活動の基礎条件を構成する資本施設が広義のインフラストラクチャーである。これは〈社会資本〉あるいは〈社会的間接資本〉とよばれるものにほかならず,その効果が間接的であるために,市場機構を通じては十分な供給が必ずしも保証されない,という特性をもっており,なんらかの形で政府が責任をもってその充足を図らなければならない。なおマルクス主義の〈土台=下部構造〉の英語訳としても使われる。
→社会資本
執筆者:山田 浩之
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…したがって,そこに政府ないし政府関係機関が介在してくるのが一般的である。交通サービスの供給には,(1)鉄道線路,道路,空港,港湾等の通路,ターミナル,(2)鉄道車両,自動車,航空機,船舶等の交通用具,(3)交通用具を稼働させるための動力,(4)運行管理が必要とされ,そのすべてが整えられなければならないが,交通投資といった場合には,多くの資本を要する通路,ターミナルの基礎施設(インフラストラクチャー)がその対象となる。線路を自ら建設する鉄道の場合を除いては,インフラストラクチャーへの投資主体と利用主体とは異るのが普通である。…
※「インフラストラクチャー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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