ウイグル文字(読み)ウイグルモジ

デジタル大辞泉 「ウイグル文字」の意味・読み・例文・類語

ウイグル‐もじ【ウイグル文字】

9世紀以降、数世紀にわたりウイグル語を記述するために用いられた表音文字。のちにモンゴル文字へと発展した。

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精選版 日本国語大辞典 「ウイグル文字」の意味・読み・例文・類語

ウイグル‐もじ【ウイグル文字】

  1. 〘 名詞 〙 九世紀中頃以降数世紀にわたってモンゴリア‐トルキスタン系部族、特にウイグル族がその言語を表わすのに用いた文字蒙古文字はこれを母体としたもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「ウイグル文字」の意味・わかりやすい解説

ウイグル文字 (ウイグルもじ)

ウイグル語表記に使用された表音文字で,アラム文字がその起源であると一般に信じられている。しかし直接にはソグド語表記に用いられたソグド文字が借用されて発達した文字である。8世紀ころから元代にかけて用いられ,本来は右から左へ向かって横書きされていたものが,90度左に回転して縦書き文字になった。この回転がソグド側で起こったのか,ウイグル側で起こったのかは明確にされていないが,漢字の表記法が影響を与えたものと考えられる。ウイグル文字は楷書体と呼ばれる主として刊本に現れる文字と,草書体と呼ばれる手書き文字とに大別できる。この文字は後にモンゴル族満州族に受け継がれてモンゴル文字満州文字満州語)になった。しかし,ウイグル文字は表のようにaとe,oとöとuとüなどを区別しないので,多種の母音をもつこれらアルタイ諸語の表記にはあまり適さなかった。そこで満州文字ではウイグル文字に点や丸を付加することにより,ラテン文字にも劣らない機能的な文字に発達させた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウイグル文字」の意味・わかりやすい解説

ウイグル文字
ういぐるもじ
Uighur

ソグド人の使っていたソグド文字をチュルクトルコ)系の人々が使いやすいように若干変革した表音文字。新ソグド文字ともよばれる。ウイグル人より以前のチュルク人によって考案、使用されたものと考えられるが、その起源となった時期は明確でない。資料として多く残っているのは、9世紀以降に中央アジアに移住したウイグル人が書き残したマニ教、ネストリウス派キリスト教や、とくに仏教の教典、そのほか各種の経済証文、契約書、公文書、手紙などである。当初はソグド文字に倣って右から左への横書きであったが、しだいに縦書きに変わり、同時にとくにモンゴル帝国期(13世紀)以後には草書体が盛んに使われるようになった。この文字はモンゴル人に採用され、改変ののち、現在でも中国の内モンゴル自治区では使われている。チュルク人世界では、一部の仏典を除き、イスラム化とともに廃れていった。なお満州文字も、ウイグル文字を基礎としたモンゴル文字を継承したものである。

梅村 坦]

『羽田亨著『羽田博士史学論文集 下巻 言語・宗教篇』(1957/再刊・1975・同朋舎出版)』

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百科事典マイペディア 「ウイグル文字」の意味・わかりやすい解説

ウイグル文字【ウイグルもじ】

ウイグル族が使った文字。イラン系のソグド文字から変わったものといわれる。モンゴル文字,満州文字のもと。8世紀には古代チュルク語(チュルク諸語)を書く文字として使われ,チンギス・ハーン時代には公用文字となった。初め右から左への横書き,のちに左から右への縦書きとなった。→ウイグル語
→関連項目ソグド語橘瑞超モンゴル諸語

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ウイグル文字」の解説

ウイグル文字(ウイグルもじ)

主に西ウイグル王国で用いられた表音文字。遊牧時代のウイグル碑文などに突厥(とっけつ)文字を使った。ウイグル文字の起源は北セム系のアラム文字にあるが,直接にはソグド文字の改変形であり,右横書きから左縦書きになったらしい。これにもとづいてモンゴル文字,さらに満洲文字がつくられた。多くの仏典をはじめとする宗教文献や寺院文書,詩文,公文書,契約文,手紙などが書き残された。イスラームの浸透でしだいに廃れ,17世紀後半の写経がほぼ最後の例。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウイグル文字」の意味・わかりやすい解説

ウイグル文字
ウイグルもじ
Uighuric script

中央アジアのウイグル人が古く用い,モンゴル文字のもとになった表音文字。起源はローマ字アルファベットと同じく,シナイ文字から出ているが,直接にはネストリウス派キリスト教会が用いた,シリア文字の変形のソグド文字がもとである。 11世紀初めに契丹 (きったん) 人が外モンゴルを征服して可敦城に鎮州建安軍を建てると,隊商貿易に伴ってソグド文字が北アジアに伝わり,ウイグル文字となった。右からの横書きであったが,13世紀初めにモンゴル人がこれを採用して縦書きに改め,モンゴル文字となった。 1599年満州人がこれをさらに採用し,1632年改良を加えて満州文字となった。いずれも第1行は紙の左端に書かれる。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ウイグル文字」の解説

ウイグル文字
ウイグルもじ

ウイグル人が用いた文字
西トルキスタンのソグド文字にならって作られた。古くは8世紀の文書に使用され,トルコ人の間ではイスラームが普及するにつれて使用されなくなり,アラビア文字におきかえられた。なお,のちのモンゴル文字・満州文字はウイグル文字にもとづいて作られた。

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世界大百科事典(旧版)内のウイグル文字の言及

【中央アジア】より

…すなわち,前イスラム時代のソグド商人(ソグド人)などに代表されるオアシス都市の商人たちは,突厥,ウイグルなど遊牧国家の内部深くにくいこみ,遊牧国家の軍事力を背景に,中国~モンゴリア間の貿易を独占するなど,その商業的活動圏を,国際的スケールのものに拡大するのに成功している。一方,これらの商人たちは,商品とともに宗教・文字など,オアシス定住地帯の文化をも遊牧国家内にもたらし,それが遊牧地帯の文明化に大きな影響を及ぼしたことは,ソグド商人の影響下に,遊牧民によって突厥文字ウイグル文字などが作成・使用されたことからも明らかである。 中央アジアにおいて,中央アジアを本拠とする最も強力な国家が出現したのは,9~10世紀のサーマーン朝,14~15世紀のティムール朝の時代などであるが,これらの国家が強力であったのは,これらの国家の内部で,遊牧民の軍事力と定住民の経済力とが最もスムーズに結び合わされ,そこに巨大なエネルギーが生み出された結果であったと考えられる。…

【トルコ文学】より

…8世紀前半の突厥の可汗と高官の紀功碑で,叙事詩的な文体を有し,対句,比喩,同義語反復の多用,豊富な動詞表現と教訓的性格など,後世のトルコ文学の特徴の多くがすでに認められる。 突厥の後をうけたウイグル族は,9~13世紀にわたってウイグル文字による多数の文献資料(ウイグル文献)を残しており,現存するマニ教,仏教,ネストリウス派キリスト教の翻訳教典の断片などには,詩形,文体に突厥時代からの発展が見いだされる。ウイグル文字による文学伝統は13世紀ころまで東トルキスタンで継承されたが,中央アジア以西のトルコ族は,10世紀以降イスラム化が進み,アラビア文字の使用が始まる。…

※「ウイグル文字」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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