エスプリ(読み)えすぷり(英語表記)Esprit

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エスプリ」の意味・わかりやすい解説

エスプリ(雑誌)
えすぷり
Esprit

フランスのカトリック左派の月刊総合雑誌。1932年10月、技術と資本の優位を拒み、人格の尊厳と人間の連帯を回復する人格主義の祖エマニュエル・ムーニエによって創刊された。ビシー政権下の1941年8月から44年12月まで休刊を余儀なくされた時期を除いて、ムーニエがドニ・ド・ルージュモンらの助力を得て50年まで編集長を務めた。カトリック思想の刷新を目ざし、知的世界で大きな影響力を振るう。ムーニエの死後は、彼の同志アルベール・ベガン、ジャン・マリー・ドムナックJean-Marie Domenach(1922―97)、ポール・ティボーPaul Thibaud、オリビエ・モンジャンOlivier Monginを主幹とし、マルクス主義実存主義にも対話を求める姿勢を一貫させ、最有力誌の一つとなる。1960年代には新批評構造主義などを紹介。しばしば政治・社会・文化全般にわたる特集号を組み、また青年新人に誌面を開放している。年1、2冊の別冊を発刊。発行部数1万強。

岩瀬 孝・小倉孝誠]


エスプリ(機知)
えすぷり
esprit フランス語

精神、機知才気本来肉体」に対しての「精神」の意味であるが、一般にはフランス人特有の機知のことをさすようになった。明晰(めいせき)さこそフランス的であるというように、エスプリも明晰、直截(ちょくせつ)で、間髪を入れず、ときには人の肺腑(はいふ)をえぐるような鋭さをもった表現であり、しかも理知的であることが理想である。エスプリはまた、その矢面にたった人が相手のことばを上回る機知をもってやり返すときに真価が出るのであって、笑って答えなければ愚鈍とみられてしまう。ユーモアが自己を客体化し婉曲(えんきょく)な表現となることが多いのに対して、エスプリはあくまでも主観的で、遠慮や気どりを排斥した明快さに特色がある。

[船戸英夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エスプリ」の意味・わかりやすい解説

エスプリ
Esprit

フランスの雑誌。 1932年,哲学者 E.ムーニエにより創刊。ムーニエの死後ベガンが引継ぎ,57年以後 J.M.ドムナックが編集。人格主義と進歩的カトリシズムに拠り,実存主義やマルクス主義と対抗,独自のキリスト教社会主義を唱え,第2次世界大戦後の思想界に重要な位置を占める。

エスプリ
esprit

フランス語で「精神」「知性」,特に英語のウィット witにあたる「才気,機知」,すなわち批評精神に富んだ軽妙洒脱で辛辣な言葉を当意即妙に述べる才のこと。その短い言葉は発言者,場所,時間から独立しうる。ラテン語の spiritus (空気・風の一吹き,息吹き) を語源とし,「湿気」を語源とするユーモアと違って,乾いた知的な営みで鋭い武器となる。

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