エコー(反射波)(読み)えこー(英語表記)echo

翻訳|echo

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エコー(反射波)」の意味・わかりやすい解説

エコー(反射波)
えこー
echo

本来は反響木霊(こだま)、山彦(やまびこ)などを意味しているが、科学的には音波電波のような波動が、物体に当たって反射し、発信点(またはその近傍)まで戻ってきたとき、その反射波をエコーという。エコーは、反射体の性質や状態に関する情報をもって戻ってくるので、この原理を利用し、離れた物体を探知するための各種の装置が考案され実用されている。たとえば、波源に超音波を用いたソナーといわれる魚群探知機や海底測深機、金属内部を調べる探傷器、人体の内部臓器を診察する超音波診断装置などがある。また波源に電波を用いた気象レーダー、船舶レーダー、航空監視レーダーなど各種レーダー、および電波高度計、スピードガンなどもある。

 また通信分野では、希望する信号(通常は最短の経路を通って到達する信号)とは別の経路を通って受信端に到達し、希望信号より時間的に遅れて受信され、その結果受信信号にひずみを生じて、通信の品質を劣化させる原因となる遅延信号成分を表す意味にも用いられる。たとえば、電離層と地表との間で反射を繰り返しながら伝わる短波の通信において、送受信点を結ぶ大円通路を経由した正規信号と同時に、大円の反対部分を経由した遅延信号の受信されることがあり、これを地球裏回りエコーという。また有線通信において、介在する線路または回路に、特性の不整合があって反射が生じたり、信号の漏洩(ろうえい)があって意図しない経路に信号電流が流れたりすると、エコーが発生し、通信の妨げとなる。これらエコーを防ぐには、その発生原因や性質などに応じた対策を講ずる必要がある。現在では種々のエコーサプレッサー(抑圧装置)や、より性能の優れたエコーキャンセラー(消去装置)が開発され利用されている。

 ちなみに、アメリカでは1960年の初めに、エコー衛星という風船状(直径約30メートル)の人工衛星を打ち上げ、地上からの電波を反射中継する通信実験に成功して、現在の宇宙通信時代の幕開けを飾った。

[若井 登]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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