エレクトレット(その他表記)electret

デジタル大辞泉 「エレクトレット」の意味・読み・例文・類語

エレクトレット(electret)

ある種のろう樹脂混合物を、直流電圧を加えた電極の間で固化させたもの。電極を取り去った後もその電荷が失われない。

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精選版 日本国語大辞典 「エレクトレット」の意味・読み・例文・類語

エレクトレット

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] electret 磁石([英語] magnet)にならって名付けられた ) ある種の蝋(ろう)や樹脂の混合物を、直流電圧を加えた電極の間で固化させたもの。電極を取り去った後もその表面正負に帯電したままとなり、永久磁石のようにその電荷が失われない。

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改訂新版 世界大百科事典 「エレクトレット」の意味・わかりやすい解説

エレクトレット
electret

強い誘電性をもった絶縁体に電場を加えて電気分極を起こさせ,その電場を去っても帯電が保たれている物質をいう。磁場の中に置いた強磁性体が磁化してできる磁石をマグネットmagnetと呼ぶのに対応して名づけられた。エレクトレットは,1924年江口元太郎が世界に先がけてカルナバ蠟と松やにを混合して溶融し,直流電圧を加えて電気分極して固めてつくった物質が最初である。エレクトレットは,絶縁体の中に電気分極を起こさせる方法によって分類する。熱エレクトレットは,物質を加熱溶融して電場によって分子を配向させてつくり,電気エレクトレットエレクトロエレクトレット)は,薄膜誘電体に強い電場をかけて分極させてつくる。そのほか分子を配向させる手段として,物質の光電特性を利用して光照射と加電を行う方法,γ線や電子線によって電荷分離を行う方法,磁場によって分極させる方法がある。また機械的変形によって電荷分離をひき起こす方法もあり,この方法によるものをメカノエレクトレットと呼んでいる。これらのうち熱エレクトレットが最もよく利用されている。電極と接したエレクトレットに電極と同じ電荷を注入してできた電荷をホモ電荷,誘電体の不純物イオンが電場によって移動して生じた電荷をヘテロ電荷と呼ぶ。無極性分子のポリエチレンテフロンポリテトラフルオロエチレン)の帯電はホモ電荷による。ホモ電荷をもつ例にポリフッ化ビニリデンPVF2がある。エレクトレットの特性は電場中で配向し,それが凍結した永久双極子の双極子モーメントに基づくと考えられている。有機化合物主体であるエレクトレットは,無機化合物の強誘電体と同様に圧電性を示し,外部から加えられる微小な力を電気に転換することができる。PVF2から成る熱エレクトレットは,その代表例である。これらは薄膜加工が容易であり,マイクロホン,振動電位計,静電スイッチ,放射線計量計などに利用される。また負電荷の高分子材料表面が血液を凝固させにくい性質を利用して,抗凝血性材料としての応用が考えられている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エレクトレット」の意味・わかりやすい解説

エレクトレット
electret

永久磁石の磁気分極のように,ある種の誘電体において誘電分極が電界をなくしても残留する物質でつくられた荷電体。磁石 magnetにならって electretと名づけられた。マイラーポリプロピレンなどのプラスチックでつくられる。エレクトレットにより形成される電界を利用した製品にエレクトレットコンデンサマイクロホンがある。

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