強い誘電性をもった絶縁体に電場を加えて電気分極を起こさせ,その電場を去っても帯電が保たれている物質をいう。磁場の中に置いた強磁性体が磁化してできる磁石をマグネットmagnetと呼ぶのに対応して名づけられた。エレクトレットは,1924年江口元太郎が世界に先がけてカルナバ蠟と松やにを混合して溶融し,直流電圧を加えて電気分極して固めてつくった物質が最初である。エレクトレットは,絶縁体の中に電気分極を起こさせる方法によって分類する。熱エレクトレットは,物質を加熱溶融して電場によって分子を配向させてつくり,電気エレクトレット(エレクトロエレクトレット)は,薄膜の誘電体に強い電場をかけて分極させてつくる。そのほか分子を配向させる手段として,物質の光電特性を利用して光照射と加電を行う方法,γ線や電子線によって電荷分離を行う方法,磁場によって分極させる方法がある。また機械的変形によって電荷分離をひき起こす方法もあり,この方法によるものをメカノエレクトレットと呼んでいる。これらのうち熱エレクトレットが最もよく利用されている。電極と接したエレクトレットに電極と同じ電荷を注入してできた電荷をホモ電荷,誘電体の不純物イオンが電場によって移動して生じた電荷をヘテロ電荷と呼ぶ。無極性分子のポリエチレンやテフロン(ポリテトラフルオロエチレン)の帯電はホモ電荷による。ホモ電荷をもつ例にポリフッ化ビニリデンPVF2がある。エレクトレットの特性は電場中で配向し,それが凍結した永久双極子の双極子モーメントに基づくと考えられている。有機化合物が主体であるエレクトレットは,無機化合物の強誘電体と同様に圧電性を示し,外部から加えられる微小な力を電気に転換することができる。PVF2から成る熱エレクトレットは,その代表例である。これらは薄膜加工が容易であり,マイクロホン,振動電位計,静電スイッチ,放射線計量計などに利用される。また負電荷の高分子材料表面が血液を凝固させにくい性質を利用して,抗凝血性材料としての応用が考えられている。
執筆者:井口 洋夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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