オケラ(その他表記)Atractylodes japonica Koidz.

改訂新版 世界大百科事典 「オケラ」の意味・わかりやすい解説

オケラ
Atractylodes japonica Koidz.

キク科で東アジアに数種が特産するオケラ属の多年草。万葉集の中にウケラとして歌われていたり,大晦日に京都の八坂神社で行われる白朮(おけら)参りの行事でも有名である。本州から四国,九州,朝鮮半島,中国東北部に分布し,日当りの良い乾いた山野草原に生えている。茎は高さ30~100cmで直立しており,硬い。葉は互生し,皮質で硬く,縁が細かくぎざぎざになっている。上部の葉は柄が短く卵形で,下部の葉は長い柄があり,3~5裂している。雌雄異株で,秋に白色または淡紅色の花を開く。花は緑色のとげ状の総苞を有し,周りに針状に枝分れした魚骨状の苞葉のあるのが特徴である。地下茎が長く,春に旧根から出る若芽は白い軟毛をかぶっている。茶花に利用されるほかに,若芽は軟らかく食用とされる。地下茎を乾かしたものを蒼朮(そうじゆつ)と呼び,利尿薬,芳香健胃薬として,また正月屠蘇とそ)の材料の1つとして広く用いられている。
執筆者:

漢方で蒼朮と呼ぶのは,中国産はA.lancea DC.およびその変種var.chinensisKitamura,var.simplicifolia Kitamura,日本産はオケラの根茎である。精油を含み,中国産の主成分はアトラクチロディンatractylodin,日本産はセスキテルペン,アトラクチロンatractyloneである。健胃,整腸および水分代謝を調節する働きがあり,他の生薬と配合して,嘔吐,消化不良や下肢浮腫に利尿薬として用いる。また近縁の中国産A.macrocephala Koidz.は白朮(びやくじゆつ)と呼ばれ,これもまた漢方薬として重要なものである。
執筆者:



オケラ(動物)

ケラ(螻蛄)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オケラ」の意味・わかりやすい解説

オケラ(キク科)
おけら
[学] Atractylodes ovata (Thunb.) DC.
Atractylodes japonica Koidz. ex Kitam.

キク科(APG分類:キク科)の雌雄異株の多年草。茎は硬く直立し、高さ0.3~1メートル。根茎はやや肥厚し長く、節がある。葉は皮質でやや硬く、普通は柄があって互生する。9~10月、茎上部に数個の花をつける。花は多数の小花とそれを取り巻く緑色の総包とからなる頭花で、針状に羽裂する魚骨状の包葉に包まれる。日当りのよい乾いた山野に生え、本州、四国、九州から朝鮮、中国東北部に分布する。根茎を乾かしたものは薬用となり、若芽はゆでて食用とする。オケラは古名のウケラのなまったものといわれる。

[小山博滋 2022年2月18日]

薬用

漢方では太くなった根茎を和蒼朮(わのそうじゅつ)といい、芳香性健胃、利尿、解熱、鎮痛剤として胃下垂、胃アトニー、食欲不振、神経痛、リウマチなどの治療に用いるが、中国産のものよりは劣る。江戸時代には、根茎を焚蒼(たきそう)とも称し、梅雨時に火にくべて湿気払いと蚊遣(かやり)に用いた。中国中部原産のホソバオケラA. lancea DC.とシナオケラA. chinensis (DC.) Koidz.の根茎を蒼朮といい、オオバナオケラA. macrocephala Koidz.の根茎を白朮(びゃくじゅつ)という。前者の二つは利尿作用が強く、後者は強壮作用が加わるとして区別して用いるが、日本では同様な作用があるとして用いる。ホソバオケラは江戸時代に佐渡で栽培しており、それを佐渡蒼朮、古立(こだち)蒼朮と称した。

[長沢元夫 2022年2月18日]



オケラ(昆虫)
おけら

昆虫のケラの俗称。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オケラ」の意味・わかりやすい解説

オケラ
Atractylodes japonica

キク科の多年草で,東アジアの温帯に分布する。日本では北海道を除く各地の山地や草原に普通に生える。地下に節のある根茎をもち,茎の高さは 30~80cmで丸く硬い。葉には柄があって互生し,長さ 10cmほどの楕円形であるが,通常は羽状に3~5片に裂けている。葉縁の鋸歯は芒 (のぎ) 状に突出する。葉の質は薄いが硬く,この芒が痛い。秋に,茎頂に径 2cmほどの頭状花をつけるが,この頭花を囲んで特徴ある総包がある。総包は樹枝状に細かく枝分れした葉脈だけが網の目のようになり,支脈の先端はいずれもとげに終る。頭花は淡紅色の小さな管状花が集ってできている。根茎を乾燥したものを生薬に用い,また独特の香りと苦みをもつので正月のとそ (屠蘇散) の原料となる。若芽は食用にもする。

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百科事典マイペディア 「オケラ」の意味・わかりやすい解説

オケラ

キク科の多年草。本州〜九州,朝鮮半島,中国東北部の暖〜温帯に分布し,日当りのよいかわいた山地にはえる。雌雄異株で茎は高さ40〜100cm。頭花は枝先につき,径2〜2.5cm,針状に羽裂した包葉に包まれる。小花は筒状で,白色〜淡紅色,秋開花。若芽は食べられ,根茎は漢方では蒼朮(そうじゅつ)といい,利尿・健胃剤。また正月の屠蘇散(とそさん)の原料となる。→おけら参り

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世界大百科事典(旧版)内のオケラの言及

【ケラ(螻蛄)】より

…直翅目コオロギ上科ケラ科の昆虫(イラスト)。俗にオケラともいう。地表近い地中にトンネルを掘り,その中で生活する。…

※「オケラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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