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オルフェ

世界大百科事典 第2版の解説

オルフェ【Orphée】

フランス映画。1949年製作。ギリシア神話のオルフェウス伝説に題材を得た自作の同名戯曲(1927)を基に映画化したジャン・コクトー監督作品。オルフェ(J.マレー)が鏡を通して生と死の境界を往還する場面をはじめとして,自己の世界を語るために選ばれたスローモーション逆回転の手法がG.メリエスを想起させる映画草創期のみずみずしさをたたえている。この作品は,アバンギャルド精神の宣言《詩人の血》(1930)と映像におけるポエジー極致《オルフェの遺言》(1960)を主題上で結びつける位置にあり,コクトーが詩人としてだけではなく,偉大な映画作家の一人であることを雄弁に立証している。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

オルフェ
おるふぇ
Orphe

フランスの作家ジャン・コクトーの一幕劇。1925年9月執筆、1926年6月ピトエフ一座により、パリ芸術座で初演、1927年出版。ギリシア神話のオルフェウス伝説を現代化してコクトー自身の詩観を述べた作品。詩人オルフェは不思議な白馬の告げる予言に迷い、妻ユリディスは毒殺される。詩人の名声をねたむ一派の謀略だが、ガラス屋に化身した天使ウルトビーズの援助で、妻を死の世界から連れ戻す。その途中、不注意のため妻はふたたび死に、オルフェは惨殺されるが、その結果、現世を超越した別世界で幸福な生活が始まる。
 生と死の領域を往来する鏡、美しい死神の行う手術、天使のガラス売りが空中に浮かぶ奇跡、ものいうオルフェの首など舞台幻覚をたっぷり使った「演劇の詩」である。「オルフェはぼくのファウストだ」と作者がいうように、この主題は後の自作の映画『オルフェ』(1949)に発展し、最後の映画『オルフェの遺言』(1959)に至って完成する。[曽根元吉]

映画

フランス映画。1949年作品。1951年(昭和26)、日本公開。脚本・監督はジャン・コクトー。ギリシア神話のオルフェウス伝説を題材に、コクトーが現代化した戯曲『オルフェ』(1925年執筆)を、ふたたび主題として取り上げ映画化した。詩人オルフェ(ジャン・マレー)が、カフェで逢った王女(マリア・カザレスMaria Casares、1922―1996)と愛と死=詩を巡って苦悶(くもん)する恋愛譚(たん)。オルフェは、死の国から妻ユリディスを見ないという条件で地上に戻るが、車のラジオで暗号を受信するとき、妻をバックミラー越しに見てしまい、彼女は消える。サンジェルマン・デ・プレ界隈の風俗から始まり、疾走するオートバイの使者におびえ、王女の優雅な美しさに魅せられ、呪文のような詩を聞き、生と死の通路を往還するのがオルフェである。処女作『詩人の血』(1930)以来、鏡、時間の逆行、スローモーションなどをさらに反復、大胆に展開した本作の主題は、遺作『オルフェの遺言』(1959)で無時間の夢想へと至る。[坂尻昌平]
『寺川博訳『オルフェ』(『コクトー名作集』所収・1979・白水社) ▽堀口大学訳『オルフェ』(『ジャン・コクトー全集7』所収・1983・東京創元社)』

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世界大百科事典内のオルフェの言及

【鏡】より

…フランツ・ウェルフェルの戯曲《鏡人》は,主人公と彼の分身としての鏡像との間に,ファウストとメフィストフェレスのような関係が成立する話である。そして映画《オルフェ》でコクトーは,鏡の向こうの世界を危険な魅力に満ちた死の国として描き,忘れがたい映像美をつくってくれた。L.キャロルの《鏡の国のアリス》も,鏡の人間にとって無限の問いかけを促す,苦い寓話として読まれるべきであるかもしれない。…

【コクトー】より

…小説家としては,死ぬ間際に死んだふりをするほど噓に忠実な《山師トマ》(1923),夢幻に遊びながら死に急ぐ少年少女の妖しい美しさを描いた《恐るべき子どもたち》(1929),この2作でその独自性を十分に味わえる。戯曲としては,人間と宿命との対比を扱ったギリシア風悲劇《オルフェ》(1925),女の孤独を痛切に感じさせる登場人物ひとりの異色作《声》(1930),秩序と無秩序の相克を通じて人間性が非人間的になりうることを示した《恐るべき親たち》(1939)をあげたい。評論集《雄鶏とアルルカン》(1918),《阿片》(1930),《在ることの困難》(1947)などは,コクトーの芸術論であると共にその人間観を述べた好個のエッセーである。…

※「オルフェ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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