ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カクレガニ」の意味・わかりやすい解説
カクレガニ
pea crab
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節足動物門甲殻綱十脚(じっきゃく)目カクレガニ科に属するカニ類の総称。基本となる属名Pinnotheresを略してピンノともよぶ。二枚貝、腕足(わんそく)類、ナマコ、ホヤなどの外套腔(がいとうこう)や排出腔に入り込んで寄生的な生活をするものが多い。宿主を食べてしまうことはないが、狭い空間を占拠するため、食用二枚貝の場合には肉がやせ、いわゆる「身入りが悪い」と嫌われる。目につくのは甲幅1センチメートル内外の雌で、膜質の軟らかい甲をもち、目の角膜色素を失っている。メガロパ幼生あるいは稚ガニへの変態直後に宿主に入るものと考えられ、その後は自由生活をすることはない。雄は雌の4分の1ないし2分の1しかなく、宿主に自由に出入りすることができる。夏の生殖期には雌とともに宿主内でみいだされるが、そのほかの時期は自由生活をするらしく、甲も十分に硬い。しかし、自由生活の雄が発見されたことはなく、生活史はいまだに謎(なぞ)のままである。
カクレガニ科にはゴカイやギボシムシの棲管(せいかん)にすみついているものも多く、宿主から出たいわゆるカクレガニ類の雄も同様の習性をもつ可能性がある。
各種類と宿主との間にはかなり密接な関係があるらしい。日本でごく普通にみられるのは、ムラサキイガイ、ハマグリ、アサリなどの殻内にすむオオシロピンノPinnotheres sinensisと、カキやアズマニシキガイなどにすみつくカギヅメピンノP. pholadisである。そのほか、ケガキやオハグロガキにはクロピンノP. boninensisがみられる。また、サザエピンノOrthotheres turboeのように、チョウセンサザエやマルサザエの胃中にすむという信じがたい習性をもつ種もある。
[武田正倫]
甲殻綱カクレガニ科Pinnotheridaeのカニ類の総称。二枚貝類の外套(がいとう)腔やナマコ類の総排出腔にすみついて寄生的な生活をする種が多く,この名があり,ヤドリガニと呼ばれることもある。しかし,海底で自由生活をし,必要に応じてゴカイ類やギボシムシなどの棲管(せいかん)に出入りする種も少なくない。基本となる属名Pinnotheresからピンノとも呼ばれる。いろいろな動物と共生あるいは寄生的な生活をする種は宿主を食べることはないが,外套腔などの空間を占拠してしまうため,宿主の発育は妨げられる。宿主とカニの種間にはかなり密接な関係があると考えられるが,生存には必ずしも宿主の体内にいる必要はないらしい。ふつうに目につくのは甲幅1cm内外の雌で,黄白色の膜質の甲をもち,眼には角膜部に色素を欠いている。雄は雌の1/2~1/3しかなく,甲は硬く,宿主に自由に出入りすることができる。カクレガニ類のうち日本でもっともふつうに見られるのはアサリ,ハマグリ,ムラサキイガイなどに入っているオオシロピンノP.sinensisとカキやイガイ,アズマニシキガイなどに入っているカギヅメピンノP.pholadisである。
執筆者:武田 正倫
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