改訂新版 世界大百科事典 「カグラコウモリ」の意味・わかりやすい解説
カグラコウモリ
leaf-nosed bat
顔の中央に神楽の面に似た四辺形の鼻葉(びよう)がある翼手目カグラコウモリ科カグラコウモリ属Hipposiderosに属する哺乳類の総称。アフリカ,南アジア,オーストラリアの熱帯,亜熱帯に約60種が分布している。日本のヤエヤマカグラコウモリH.turpisは国内では石垣島,西表(いりおもて)島,与那国島にのみ分布し,固有種と思われていたが,近年,タイにも生息することが明らかになった。体長7cm前後,前腕長6.5cm前後,体重25~31g。耳介は先端がとがり,左右が離れている。顔の中央にある皮膚のしわ,鼻葉は前,中,後の3部に分かれるところはキクガシラコウモリのそれと同様であるが,中鼻葉に中央の突起がなく,後鼻葉の後縁が平らで,その表面には垂直に走る浅い溝があり,前鼻葉の外側に側鼻葉があるなどの点などで顕著に異なっている。洞窟に数頭~数百頭の群れですみ,日没前後にねぐらを離れ,森林内を緩やかに飛びながら昆虫を捕食し,翌朝ねぐらに帰る。6月に1産1子を生む。台湾から中国南部,インド北部まで広く分布するタイワンカグラコウモリ(ヒマラヤカグラコウモリ)H.armigerは前種によく似るが,鼻葉が複雑で,体が大きく,体長10cm,前腕長9cm前後に達する。
執筆者:吉行 瑞子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報