改訂新版 世界大百科事典 「カタヤマガイ」の意味・わかりやすい解説
カタヤマガイ (片山貝)
Oncomelania hupensis nosophora
日本住血吸虫の中間宿主として知られるイツマデガイ科の巻貝。住血吸虫症が広島県神辺町(現,福山市)の片山丘付近に多かったのでこの名がある。また,住血吸虫の中間宿主であることを発見した宮入慶之助を記念してミヤイリガイともいう。殻はやや小さく卵形,厚く堅く,高さ0.7cm,太さ0.25cmで,細高い円錐形。巻きは8階。栗褐色で殻表は平滑で光沢がある。軟体は暗色で,触角の基部に眼がある。たんぼの溝や浅い小川にすむ。冬は岸の草の根もとやくぼみで休眠する。春,田に水を張るころに貝が水中に入ると,貝の体内に寄生していた日本住血吸虫の幼生のセルカリアは,軟体から泳ぎ出して水面の水あかとともに浮かんでいる。そこへ人やウシなどが入ると,足に水あかとともに付着して皮膚を通して血管に入り住血吸虫の親虫となり,日本住血吸虫症を起こす。この種は日本では千葉県利根川筋,山梨県,広島県神辺町,久留米市付近に分布して,住血吸虫病の原因となっているので撲滅につとめている。また,中国や台湾,フィリピン,セレベス島にもカタヤマガイに似た種類が分布しており,やはり住血吸虫症の原因になっている。これらの地方には,4600万人の患者がいると報告されている。
→ニホンジュウケツキュウチュウ
執筆者:波部 忠重
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報