カテーテルアブレーション

デジタル大辞泉 の解説

カテーテル‐アブレーション(catheter ablation)

不整脈に対する非薬物療法一つ先端電極のついたカテーテル血管から心臓内に挿入し、不整脈の原因となっている組織をセ氏50~60度の熱で焼灼しょうしゃくする。心筋焼灼術

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

六訂版 家庭医学大全科 の解説

カテーテル・アブレーション
(循環器の病気)

 血管から心臓の各部位へ細い管(カテーテル)を到達させ、カテーテルの先端からエネルギー源を出して組織を壊死(えし)させる治療法をカテーテル・アブレーションといいます。

 1982年に発作性上室性頻拍(ほっさせいじょうしつせいひんぱく)心房粗細動(しんぼうそさいどう)を対象に、心腔内に直流の電気を流す房室接合部のカテーテル・アブレーションが報告されました。

 この方法では、房室ブロックを作成して、心房レベルでは頻拍でも心室興奮はベースメーカーによって制御されるために、頻拍による症状は改善されましたが、頻拍そのものは根治しませんでした。さらに87年には、直流ではなく高周波通電による実験と臨床応用が行われるようになりました。同時期にWPW症候群の副伝導路に直接通電するようになり、ピンポイント治療で頻拍が根治できるようになりました。

 1990年には、米国で高周波を流すカテーテル・アブレーションが多くの施設に普及しました。この時期、日本では臨床的にはまだ直流通電によるアブレーションが中心でしたが、高周波カテーテル・アブレーションの実験と一部の臨床応用が始まりかけていました。91年に電極カテーテルの改善が行われ、先端に4㎜長という大きな電極をもつラージチップカテーテルが現れ、根治率が上がりました。92年には日本でも高周波カテーテル・アブレーションが普及し始め、97年ころから3次元マップCARTOが登場し、頻拍の興奮回路を詳しく突きとめることが可能になりました。

 アブレーションに用いられるエネルギー源としては、直流通電と高周波のほかにマイクロウエーブやレーザーなども実験的に用いられましたが、臨床的には普及していません。

 また、冠動脈内にエーテルなどの化学物質を注入して冠動脈灌流(かんりゅう)領域を壊死(えし)させる方法、つまり小範囲に心筋梗塞(しんきんこうそく)を起こして、不整脈をなくす化学的アブレーションも過去に行われました。

 しかし、標的とする領域が限られることや、催不整脈作用や血行動態への影響などもあり、不整脈の根治を目的とする化学的アブレーションは行われなくなりました。現在は肥大型心筋症(ひだいがたしんきんしょう)に対して中隔部を壊死させて血行を改善する目的で行われています。

 現在行われている不整脈治療のためのカテーテル・アブレーションは、すべて高周波によるものです。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

百科事典マイペディア の解説

カテーテルアブレーション

不整脈の治療法の一つ。心臓は電気信号を発生してそれが上から下へ伝導することで,規則的に鼓動を繰り返している。ところが,不整脈の一種である発作性頻脈のうち,WPW症候群や房質結節回帰性頻脈という病気では,正常な伝導路のほかに余分な伝導路ができてしまう。このため,電気信号がぐるぐる回り出して,運動もしていないのに急に心臓がドキドキし,立ちくらみや息苦しさを伴うこともある。 カテーテルアブレーションは,先端に電極のついた細いカテーテルを血管から心臓に通して,こうした余分な伝導路を高周波電流の熱で焼ききる方法である。カテーテルを挿入する部分の皮膚に局所麻酔をして,手術は2〜3時間,翌日には退院も可能である。開胸手術の必要がないうえ根治治療につながり,発作性頻脈の治療法として確立されている。成功率は8〜9割ほど。1994年から健康保険も適用された。 ただし,この治療法では電流を流して焼いたところに血栓ができる恐れもある。また,焼いた部分がちょうどやけどが治るように回復したために,余分な伝導路が復活する場合もあり,こうなるともう一度同じ処置をしなければならない。 不整脈の治療法には,このほか抗不整脈薬による薬物療法もあるが,これは症状を抑制するだけで,投与しつづけないと予防できない。年に2回くらいしか発作が起きなくても毎日服用しなければならず,副作用の心配もある。 このため,どの方法を選ぶかはインフォームド・コンセントが大切である。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

家庭医学館 の解説

かてーてるあぶれーしょんしんきんしょうしゃくじゅつ【カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)】

 血管から心臓の中に細い管(カテーテル)を入れ、その先端から高周波を流すことによって心筋の一部に軽いやけどをおわせ、不整脈(ふせいみゃく)の源を取り除く治療法です。
 足の付け根に局所麻酔をして、そこの血管からカテーテルを入れていくのがふつうです。高周波を流すときはあまり痛みはありません。
 アブレーション法は、手術ではなく、心臓カテーテル検査の延長と考えてもよいのですが、成功すると不整脈が根本的に治り、薬物治療が不要になります。
 この治療法は現在、おもにWPW症候群、発作性上室性頻拍(ほっさせいじょうしつせいひんぱく)、特発性心室頻拍(とくはつせいしんしつひんぱく)に対して行なわれていますが、今後はその他の不整脈の治療にも使われていくと思われます。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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