翻訳|caribou
哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目シカ科の動物。北アメリカ産のトナカイの呼び名で、ヨーロッパ産と同種と考えられるが、別種とする説もある。アラスカやカナダなどに5亜種が生息し、寒冷地に適応して体毛は長くて厚い。集合性があり、大群で季節的な移動をする。昼行性で、採食は早朝か夕刻に行い、日中や夜間は休息する。駆けると時速60~78キロメートルのスピードに達する。泳ぎも巧みで、遊泳速度は時速9.6キロメートルぐらいである。発情期は10~11月で、シンリン(森林)カリブーという亜種の雄は、12~15頭の雌を集めハレムをつくる。妊娠期間は7か月半から8か月で、5月中旬から7月初旬に1子を産む。新生子は体高51センチメートル、体重5キログラムほどである。成獣の大きさは、ニューファンドランドやラブラドル地方に産するシンリンカリブーが最大で、体重270キログラムに達する。平均的なバレングラウンズカリブーでは、体長は雄180センチメートル、雌166センチメートル、体高は雄110センチメートル、雌104センチメートル、体重は雄110キログラム、雌80.7キログラムである。
[増井光子]
カリブーという語は北米先住民の野生トナカイの名称に由来し、厳密にはいわゆるシンリントナカイのみをさす。カナダやアラスカではツンドラトナカイもこの名でよぶことがあり、一般には新大陸の野生トナカイの総称と理解されている。したがって、近代になって旧大陸から導入された飼育トナカイには適用されない。
森林およびツンドラの民にとって、カリブーはもっぱら狩猟の対象であり、また必須(ひっす)の生活資源であった。食料(肉のほかに内臓や骨髄まで食べる)のほかに、毛皮は衣服や寝具、越冬用のテントカバーとなり、角(つの)や骨も各種の道具や装飾品などに加工され、余すところなく利用された。とくにカナダ北部のバレングラウンズBarren Groundsに住むカリブー・イヌイットは、全面的にカリブー依存の生活を送っていた。
[井上紘一]
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…一連の探検隊のなかで最も著名なのは,1920年代に派遣された第5次チューレ探検隊で,その中心になったのはグリーンランド出身のラスムッセンKnud Johan Victor Rasmussen(1879‐1933)であった。彼はカナダのバレン・グラウンズのカリブー・エスキモーなどの調査をした後,北極海沿いに犬ぞりでアラスカのシューワード半島まで行き,東エスキモー語が広い地域で通用することを実証する結果となった。一方,アラスカ・エスキモーの調査は19世紀半ばごろから始まったが,東部のエスキモーに比べ調査の歴史は浅い。…
…しかし現在もなおロシアは世界有数の毛皮産出国であり,幾種類かの高級毛皮を国際市場に送りだしつづけている。【松木 栄三】
[エスキモー]
エスキモーをはじめ北方民族で最も愛用されているのは,優れた保温力をもつカリブー(トナカイ)の毛皮であろう。次いでアザラシの皮が多用されている。…
…偶蹄目シカ科の哺乳類。北アメリカでは野生種はカリブーcaribouと呼ばれる。角が雄だけでなく雌にもふつうある。…
※「カリブー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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