精選版 日本国語大辞典「鹿」の解説
しか【鹿】
〘名〙
① (古く、「女鹿(めか)」に対し雄じかを「夫鹿(せか)」と呼び、それが変化したものという) シカ科に属する哺乳類の総称。体はほっそりとし、四肢が細長く、尾は短い。ふつう雄の頭部には樹枝状の枝角があり、毎年基部から落ちる。森林や草原にすみ、木や草の葉・地衣などを食べる。ニホンジカ・トナカイ・ジャコウジカ・キョン・キバノロ・ノロなどの種類がある。日本では特にニホンジカをさしていう。かせぎ。かのしし。かかしし。《季・秋》
※浮世草子・好色二代男(1684)五「我を見しらぬ鹿(シカ)にこがれ」
③ 独活(うど)の生長して葉の伸び出たもの。鹿がこれを食うと角が落ちると俗にいう。
※歌謡・閑吟集(1518)「なをつまば、さはにねぜりや、みねにいたどり、しかのたちかくれ」
[語誌](1)①は古代からの食用狩猟獣で、猪と共に肉を意味する「しし」の語で呼ばれた。猪と区別して「かのしし」と呼び、また「かせぎ」ともいう。これらに共通する「か」が、鹿を意味する基本的な語のようだが、「しか」と「か」の関係は明らかではない。
(2)上代の文献からしばしば登場するが、特に和歌では秋の交尾期の牡の声が情趣あるものとされ、「万葉集」以来萩、紅葉等の景物とも組み合わされて多く詠まれた。鹿猟の一種「照射(ともし)」も平安後期以降、夏の景物として和歌の題材となった。なお、藤原氏の氏神である春日社が、神の使いとして尊重したことも、鹿と日本文化とを関係深いものとした。
(2)上代の文献からしばしば登場するが、特に和歌では秋の交尾期の牡の声が情趣あるものとされ、「万葉集」以来萩、紅葉等の景物とも組み合わされて多く詠まれた。鹿猟の一種「照射(ともし)」も平安後期以降、夏の景物として和歌の題材となった。なお、藤原氏の氏神である春日社が、神の使いとして尊重したことも、鹿と日本文化とを関係深いものとした。
か【鹿】
〘名〙
① 鹿(しか)の古称。
※万葉(8C後)一・八四「秋さらば今も見るごと妻恋ひに鹿(か)鳴かむ山そ高野原の上」
② 江戸時代、上方の遊女の階級の一つで、囲(かこい)の別称。
※浮世草子・傾城禁短気(1711)一「昔より身躰に応じ、松(せう)梅(ばい)鹿(カ)の位を分かち、分際相応にそれぞれの役々の女郎に縁を結び」
ろく【鹿】
〘名〙
① 鹿(しか)をいう。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
② 鹿・猪などの獣肉。古くは、獣肉を食べることを忌んだが、寒の内に限って、体を暖め血行をよくする薬として鹿や猪の肉を食べる風習があった。
※雑俳・類字折句集(1762)「惣嫁同士貴様も鹿をくやったか」
かせぎ【鹿】
〘名〙
① 「しか(鹿)」の古名。《季・秋》
※書紀(720)推古六年一〇月(岩崎本訓)「越国白き鹿(カセキ)一頭(ひとつ)を献れり」
② 人形浄瑠璃社会の隠語。
(イ) シラミ。
(ロ) イノシシ。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報