翻訳|Gabriel
ヘブライ語で〈神の人〉の意。ユダヤ教,キリスト教,イスラム教の天使で〈神意の伝達者〉の役割を果たす。旧約聖書ではダニエルに幻の意味を説明した(《ダニエル書》8,9章)。また新約聖書ではザカリヤに現れ,エリサベツがバプテスマのヨハネをみごもることを告げ(《ルカによる福音書》1章),マリアにキリストの降誕を告知した(同)。キリスト教ではとくに重要な三大天使の一人とされ,美術のなかでも〈聖告(受胎告知)〉を主題とする数多くの作品に描かれて親しまれてきた。ガブリエルは,青年または少女のような中性的な顔だちで,翼と光輪をもつ。武装の天使ミカエルと異なり,ブルガリアのバチコボ修道院フレスコ画(12世紀),フラ・アンジェリコ《受胎告知》(15世紀),ヤン・ファン・アイク《受胎告知》などに見られるように,描かれた時代の風俗を反映したきわめて美しい服装で表現されることが多い。イスラム教ではムハンマドにアッラーの啓示を与えた天使とされる。
執筆者:浅野 和生
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ユダヤ教とキリスト教における天使長の一人。神の人の意。『旧約聖書』末期の「ダニエル書」に2回(8章16、9章21)、『新約聖書』では「ルカ伝福音(ふくいん)書」に2回(1章19、26)言及されている。イスラム教の始祖ムハンマド(マホメット)もガブリエルを通して神の啓示を受けた。旧約では神と人間の間の仲介者として幻の意味を解き明かし、新約では神にかわってバプテスマのヨハネ、イエス・キリストの出生を告知する任務を担った。『旧約偽典』の「第一エノク書」20章7にはガブリエルを含む天使長のリストがある。
[秋輝雄]
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…つぎの高宗も景教を保護し,諸州にその寺院をおかせ,アラホンを崇(たつと)んで鎮国大法主とした。仏教に傾斜した則天武后の治世には少し衰えたが,玄宗によって保護され,アブラハム(羅含)やガブリエル(及烈)といった有力な僧侶によって大いに教線を拡大した。 当初はこの教えを波斯経教,その寺院を波斯寺,つまりペルシア人の宗教とよんできたが,発生の地がペルシアではなく大秦国であることを知り,745年(天宝4)には詔によって波斯寺を大秦寺と改めることになった。…
…ここによくいわれるコーランの〈読みにくさ〉,あるいは伝統的に〈翻訳〉を拒否し,かたくなにアラビア語のコーランに固執しようとするムスリムの態度にみられるコーランの特異性がある。〈クルアーン〉とは,元来〈読誦されるもの〉〈読誦〉の意であるが,それは神がコーランの原本ともいうべき〈天に護持されている書板〉を天使ガブリエルを通して直接にムハンマドに読み聞かせたものである。コーランとは,このように朗々と声を出して誦するものであり,そこにコーランの魅力の一つがある。…
…しかし,スフラワルディーの〈光〉は観念的なものではなく,霊魂の透徹した領域において認識可能なものである。彼はこのようにして宇宙論と認識論の統一に成功し,人はその照明的原像である天使ジブラーイール(ガブリエル)と合体することにより,至福の境地に到達しうるとする。主著は《東方照明の哲学Hikma al‐ishrāq》。…
…キリスト教では,天使ミカエルが魂の重さをはかるてんびんをもち,また《ヨハネの黙示録》6章に語られる4騎手のうち,3頭めの黒馬に乗る〈飢饉〉は,手に〈裁き〉のてんびんをもつ。イスラム教では,大天使ガブリエルが〈最後の審判〉の日にてんびんで人間の善業と悪業を秤量し悪業が勝ればジャハンナム(聖書のゲヘナに由来する語で〈地獄〉の意)におとすとコーランにある。重量をはかることを裁きの手段とする考えは中世に至って強化され,魔女裁判の中で猛威をふるった。…
…そのような瞑想中,突然に彼は異常な経験をする。全身が押しつぶされるような感覚があり,大天使ガブリエルが啓示を〈誦(よ)め〉と命じたと伝えられている。最初の啓示は彼が40歳のころにあった。…
…その後,ルーブル宮殿やコンピエーニュ宮殿と同じく,フランス王室が長い時間をかけて増築を繰り返す。工事にはアンリ4世時代のドロルムからルイ15世時代のガブリエルに至る,歴代の王室建築家がかかわった。そのため建物の配置は不整形で,西側の最も古い部分(〈ユリシーズの間〉など謁見,宴会などのための公的な部屋を配置),中央の馬蹄形の一画(国王や王妃のための私室群),東側のコの字形の一画(兵士の区画)に,大きく分けられる。…
※「ガブリエル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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