コロンビアの小説家。電信技師の子として3月8日サンタ・マルタ州アラカタカに生まれる。幼・少年時代を母方の祖父母に育てられ、強い文学的影響を受けた。ボゴタ大学法学部中退後はジャーナリストとして、国内およびベネズエラの新聞、雑誌、さらにはキューバの通信社プレンサ・ラティナに勤め、ローマ、パリ、カラカス、ハバナ、ニューヨークと移りながら小説と取り組む。その間、独自の文学空間として創造した架空の土地マコンドを舞台に、『落葉』(1955)、『大佐に手紙は来ない』(1961)、『ママ・グランデの葬儀』(1962)、『悪い時』(1962)などの短編・中編を発表。その後しばらく小説を離れ、メキシコで映画の脚本を書いて糊口(ここう)をしのぎながら、マコンドの創世から消滅に至る物語を構想、これが『百年の孤独』となって1967年に刊行されるや、スペイン語圏はもとより、世界中の注目を集め、この作品によってラテンアメリカ現代小説の代表的存在となった。以後、短編集『純心なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨な物語』(1972)で新しい方向を目ざし、1975年には『百年の孤独』と並び称される、独裁者を主人公とした『族長の秋』を発表、1981年に出した中編『予告された殺人の記録』も超ベストセラーとなり、大きな反響をよんだ。彼はまたルポルタージュや政治評論も数多く手がけている。このほかの主要な作品に、『ある遭難者の物語』(1970)、『青い犬の眼』(1973)、『コレラの時代の愛』(1985)、『迷宮の将軍』(1989)、『誘拐』(1996)、ノンフィクションに『戒厳令下チリ潜入記――ある映画監督の冒険』(1986)などがある。
1982年にノーベル文学賞を受賞した。1990年(平成2)新ラテンアメリカ映画祭出席のため来日。
[内田吉彦]
『高見英一訳『落葉 短篇集』(1980・新潮社)』▽『山陰昭子・神代修他訳『ガルシーア=マルケス全短篇集』(1983・創土社)』▽『ガブリエル・ガルシア・マルケスほか著、鼓直訳『ジャーナリズム作品集』(1991・現代企画室)』▽『堀内研二訳『ある遭難者の物語』(1992・水声社)』▽『旦敬介訳『十二の遍歴の物語』(1994・新潮社)』▽『旦敬介訳『愛その他の悪霊について』(1996・新潮社)』▽『旦敬介訳『誘拐』(1997・角川春樹事務所)』▽『鼓直訳『百年の孤独』(1999・新潮社)』▽『郷正文著『作家と無意識』(2000・審美社)』▽『野谷文昭訳『予告された殺人の記録』(新潮文庫)』▽『桑名一博他訳『ママ・グランデの葬儀』(集英社文庫)』▽『後藤政子訳『戒厳令下チリ潜入記――ある映画監督の冒険』(岩波新書)』▽『木村栄一訳『エレンディラ』(ちくま文庫)』▽『鼓直訳『族長の秋』(集英社文庫)』▽『旦敬介訳『幸福な無名時代』(ちくま文庫)』
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コロンビアの小説家。1982年度のノーベル文学賞を受賞。サンタ・マルタに近い小さな町アラカタカで生まれ,ボゴタ大学で法律を学んだ後,ジャーナリズムの道に入ってローマ,パリに在勤。現在はメキシコに住む。1955年に中編《落葉》を発表してから,同じく中編《大佐に手紙は来ない》(1961),短編集《ママ・グランデの葬儀》(1962),中編《悪い時》(1964)などを経て,20世紀小説の最大の収穫の一つと言われる《百年の孤独》(1967)を世に送った。33ヵ国語に翻訳され,600万部を売ったというこの物語は,架空の町マコンドを建設したばかりか,その滅亡にも立ち会った奇矯なブエンディーア一族の100年にわたる年代記のかたちを借りて,征服,植民,独立そして激動する現在というラテン・アメリカの歴史を描いた作品である。ロムロ・ガリェゴス賞を受けた72年にカリブ的な幻想に満ちた短編集《純真なエレンディラとその無情な祖母の信じがたい悲惨の物語》で好評を博したガルシア・マルケスは,引き続いて,ラテン・アメリカが生んだ唯一の神話的存在である独裁者の孤独と狂気の物語《族長の秋》(1975)を書いた。上記のほかにも,小説的ルポルタージュとも言うべき《ある遭難者の物語》(1970)や,《予告された殺人の記録》(1980)などがある。
執筆者:鼓 直
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1928~
コロンビアの作家。ラテンアメリカ文学の「ブーム」を代表する作家の一人。1950年代の半ばから中編を発表して注目されていたが,67年の『百年の孤独』が世界的なミリオン・セラーとなり,国際的名声を得た。欧米近代小説の影響を強く受けながらも,ラテンアメリカ風土と人間を包みこむ神秘的・神話的な雰囲気のなかに現実世界を描き出す,ユニークな語りの形式を創造した。82年ノーベル文学賞受賞。
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…アルゼンチンのペロン政権下の暗い時代の中での不条理な愛の葛藤を描いたサバトErnesto Sábato(1911‐ )の《英雄たちと墓》(1961),廃虚に等しい工場を舞台にして生の無意味を追究したウルグアイのオネッティの《造船所》(1961),フランス大革命のカリブ地域に及ぼした影響をたどったキューバのカルペンティエルの《光の世紀》(1962),メキシコ革命で成り上がった男の臨終の床の意識をなぞったフエンテスの《アルテミオ・クルスの死》(1962),実験的なスタイルで根なし草的な生を浮かび上がらせたアルゼンチンのコルターサルの《石蹴り遊び》(1963),ペルーの社会的現実を全体小説のかたちでとらえたバルガス・リョサの《緑の家》(1966)。そして,架空の町マコンドの創建と滅亡に仮託して新世界の歴史を描いたコロンビアのガルシア・マルケスの《百年の孤独》(1967)。素材も形式もきわめて雑多であって,強い物語性と前衛的な方法性といった抽象的なレベルでしか共通性を語りえないこれらの作品は,小説文学の命脈について一般になされている不吉な予言におびえていたパリ,ニューヨーク,ロンドンの読者たちを,そのうちに秘めた活力によって驚かし,安堵(あんど)させたのだった。…
※「ガルシアマルケス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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